第九話 ページ10
「や…流されるまま流されたみたいな感じですから…どうだか」
顔を逸らしながら呟く。グイグイ来るな、この人。
写「いや、失敬。なに、私は無咎と賭けをしていてね。何方かが負けたら酒を奢ると。いやァ、君のお陰で珍しいチャイナの酒が飲めるよ」
ホクホク顔で嬉しげに言うジョゼフ。
…結果的に彼のために成ったのなら良いか。
ジッと彼を見つめる。
彼の過去…つまり辿って来た運命を視た。
革命…片割れ…記憶保存…カメラ・オブスキュラ…
「(なるほど、この人も中々…)」
視た後、私は美智子さんに礼を言った後、彼らと別れてハンターの屋敷を後にした。
帰った後は直ぐに夕飯だった。結構美味しい。
好きな席に座っても良いとのことなので、私は窓際の席に座って食事を取った。いつの間にか外は雨が降っていた。
雨は嫌いではない。
あの神様とのことを思い出すから。
「(いつになったら御礼を言えるんだろう…)」
そう思いながら桃ジュースを飲んだ。すると、ガタン、と音がした。
上を向くと、小馬鹿にしたような顔をする范無咎が立っていた。
范「フッ、間抜け面だな小娘」
「誰が間抜け面だ！背高ノッポ！！」←
皆私の怒鳴り声になんだなんだと騒ぎ出す。が、無咎がジロリと睨みつけたせいか皆一斉に静まり返った。
彼は夕飯の乗った盆を私が夕飯を食べていた机(つまり一緒の)に置くと、「相席させて貰う」とだけ言って座った。
「…なんで私とおんなじ席なの。君片割れは？」
范「謝必安は写真家のご老体と一緒に食ってる」
無咎はワザとご老体、という言葉を強調して言った。
「写真家って…ジョゼフさんでしょ？あの人の何処がご老体なのさ？」
范「嗚呼、言ってなかったな。アイツの実年齢は60だぞ」
彼がそう言った瞬間、無咎スレスレにナイフが高速で飛んできた。
それを無咎は振り向かずに易々と掴んで止めた。彼は鋭い目付きで後ろを振り向くと、
范「随分と物騒な横槍の入れ方だな、爺さん」
と挑発するように言った。彼の振り向いた彼の視線の先には椅子に肘を掛け、右手を投げた構えにしたまま、青筋を立てるジョゼフの姿があった。
ジ「誰がご老人だ、生意気な小僧め！」
范「ごろーじーん」←
ジ「刺すぞ貴様ァ！！」←
サーベルを取り出すジョゼフだが、事態を鑑みたレオに運ばれて行った。
クックッと喉を鳴らしながら笑う范無咎。
その時の彼の顔は悪戯が成功して喜ぶ少年のような顔だった。
「(…一言多いけど、面白い人)」
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作者名：文学少女 | 作成日時：2019年2月4日 21時
