運命視と黒傘【第五人格】 (ページ39)

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第三十三話ページ39

「やだ」

少し顔を上げたかと思うと、直ぐにまた俯き不貞腐れるトゥナ。無咎は溜息をつくと彼女の隣にどっかりと座った。

そのまま彼女の肩を抱き、自分の胸板に引き寄せた。
そして髪を弄り出す。

「な、なに？」

范「すまん、急だったな。なに、改めて珍しい髪色だと思ってな」

無咎は何気なく言ったのだろう。だが、トゥナの中で感情が堰を切ったように溢れ出した。

「そ、そうだよね！変だよね！こんな、こんな赤い髪、変だよね！！」

笑いきれていない笑顔で、引き攣った口角で、震えた声で。
彼女は下手くそに平静を保とうとした。
目には薄っすらと涙の膜ができ、手はぎゅう、とスカートを掴んだ。

「(あ…あ、ダメ、ダメだよトゥナ、これじゃ、無咎がびっくりしてしまう….)」

范「すまん、俺は口下手でな……必安なら気の利いた唄の一つでも贈っただろうが…」

無咎は目を伏せ、ポツリと呟いた。

范「だがな、トゥナ。俺はお前の髪を変だとは思わん。紅梅の花のように美しいではないか。俺は好きだぞ」

俺は好き。

その言葉にトゥナの両目から涙が流れた。無咎は指で涙を掬うと、再び彼女を抱き締めた。

「ぐすっ…この髪色、母さんと一緒なの…ひっく……」

范「そうか。お前の母も美しい髪の持ち主だったか」

「ありがとう……ありがとう無咎」

無咎はいつまでも彼女を抱き締めた。

☆ ☆ ☆

范「戻ったぞ」

二人が帰って来たのは一時間後ー…雨が降っている最中だった。

皆は心配したが、一人だけ心配を通り越してブチ切れた者が一人居た。

謝「なんでよりによって雨になってから戻るんですかまた死んだらどうするんですかそしたら私はもうホントに二回死にますよ彼女を連れて早く戻りなさい私の視界外で死ぬなんて許しませんよええ！(ここまでノンブレス)」←

范「すまん必安…顔が凄いことになってるぞ…」←

謝「因為誰！！(誰のせいだと！！)」←

母国語まで出る始末の必安だったが、背後から投げられたエミリーの注射器がうなじに凄まじい速さで突き刺さり、気を失った←

医「私が彼を運んでおくから、貴方は彼女をお願いね」

范「」←

☆ ☆ ☆

無咎はエミリーと別れると泣き疲れて寝ているトゥナを優しくベッドに寝かせた。

紅梅色の髪。

白い肌に芙蓉の如き唇。

華奢な体躯。

彼女の髪を優しく梳き、笑みをこぼす。

どうやら俺は彼女のことを真に好いているようだ。

范「ゆっくり眠れ。トゥナ」

彼は彼女の額に接吻をすると部屋を出た。