第十五話 ページ16
三人脱出を知らせるアイコンが表示される。
フォルトゥナはゲート通電の瞬間、諸行無常によって変わった黒無常に組み伏せられていた。
大の大人、しかも男の力に抵抗出来るはずもなく。
范「チッ、また貴様の所為だ小娘。小賢しく立ち回った気持ちはどうだ…！」
ビキリ、と青筋を立てる黒無常。フォルトゥナはそんな彼を血のような赤い目のままボンヤリと眺めていた。
「……私を殺すの？ウジン」
か細い声でうわ言のように呟く彼女に顔を顰める黒無常。
范「当たり前のことを言うな。今頃仲間三人は荘園に戻っている頃だろうよ。…だが、俺をここまで翻弄したのだ。言い残すことがあるなら聞いてやる」
傘を構え、左手で首を押さえつけながら言う。フォルトゥナは一瞬目を見開くと、儚げな笑みを浮かべて言った。
「…だったら、もう一度あの神さまに会いたい。私、頑張って生きてるのよ…って、言いたい」
へらりと笑った彼女に黒無常は驚愕した。
彼女の言う神さまとやらは分からないが、その笑い方は知っている。見たことがある。
俺はかつてその顔を見た。
そう、あれは…俺と結果的に今生の別れをしてしまった親友のー…
謝『無咎、傘を持ってきますから、そうしたら、二人で帰りましょう。きっと戻ってきますから。私、足は速いのをご存知でしょう？』
忘れようにも忘れられぬその微笑。
范「……やめろ」
「…え……？」
黒無常の目はあの狩人の目では無く、ただ『無』だった。
范「……そういう笑い方はやめろ」
謝『無咎、待っていて下さいね』
フォルトゥナの目は何時もの色に戻っていた。
范「…ゲームに負けても荘園に戻されるだけだ。ここでお前を殺しても、お前は荘園で蘇生されるだけで死にはしない」
黒無常はそう言うとフォルトゥナを横抱きした。フォルトゥナは運命視の反動と白無常の一撃で失血死する可能性があった。
「……私、歩けるよ……」
謝「たわけ。先程まで首を本気で押さえつけられていた小娘が歩けるわけ無かろう。荘園には医術師がいたな、お前を引き渡す」
黒無常はゆっくりと階段を降りると荘園に向かう小道を歩き出した。
「……君、不器用でしょ。モテなかったんじゃない？」
范「落とすぞ」
「ごめん」
またもやへらりと笑った彼女に顔を顰め、眉根に皺を寄せる黒無常。
范「(コイツと話していると調子が狂う…)」
「(何だろう、この感覚……水の中にいるみたい…生温い……この人ホントワケわかんないなぁ…)」
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作者名：文学少女 | 作成日時：2019年2月4日 21時
