第十一話 ページ12
とうとう初戦日。
待機部屋に座ってハンターの方を睨む。
私はあの後、思った事がある。
無咎には負けたくない、絶対。
「(絶対に負けてなるものか)」
悶々とカーテンの向こう側を睨みつけていると、隣に誰かが座った。
占「あ、フォルトゥナさんかな？僕は占い師、イライ・クラークだ。宜しくね」
落ち着いた雰囲気と低くて穏やかな声。
「あ、はい、宜しくお願いしますクラークさん！」
慌てて挨拶を返す。でもやっぱり顔は合わせられない。
その後も続々と仲間が入室して来た。
探鉱者のノートン・キャンベルさん、
傭兵のナワーブ・サベダーさん。
二人とも気さくに話し掛けてくれた。彼らは私に暗号解読に回るよう提案してくれた。どうやら初戦ということもあるのか、まずは慣れようとのことだった。
準備が済んだ。
ふとカーテンの向こう側に居るであろう無咎を睨み付ける。
カーテンの隙間から、にっこりと笑う口元が見えた。
「絶対、負けない」
ガラスの割れるような音と共に、私の意識は遠のいて行った。
☆ ☆ ☆
気付くと灰色の空が広がる廃墟に立っていた。
どうやら病院内らしい。医療器具が辺りに散乱し、ベッドには赤黒い染みがこびり付いている。
…何があったのかは、視たくない。
近くに例の暗号機らしきものがあった。
そっとキーボードのようなものに指を滑らせる。一つボタンを押せばセットされている紙に文字が刻まれていく。
「なるほど。この暗号はこういうタイプか。なら多分、こっちはきっと…」
暗号解読に楽しさを見出だし始め、9割解読し終えた時、心音がし出した。
「ハンターが近くにいる…！」
ここを離れてチェイスをしよう。
暗号機は殆ど終わってるし、運が良ければここに来た人が引き継いで解読してくれる可能性がある。
そっと暗号機から離れ、階段に向かう。
謝「こんにちは、今日は良い天気ですね」
「ーーッ！？」
廊下に出た瞬間、左側から掛けられた声。
落ち着いた雰囲気なのが余計に怖い。
左側に向きつつ上体を後方に逸らす。
鼻のすぐ上を黒傘が薙いで行った。
前髪が掠って散った。
「やっば…ッ！」
謝「おや、矢張りやり辛いですね。范無咎が手を焼く訳だ」
尻餅をつく。
両眼が熱い。
瞬時にあらゆる『運命』を手繰り寄せる。
傘を避けて安全にチェイスへ。
ハンターがこの場から強制的に離れる。
ノーダメージで脱出……
いや、私が言ったんだ。
「かかってこいよ、ハンター」
ね？范無咎
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作者名：文学少女 | 作成日時：2019年2月4日 21時
