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過去の物見 2 ページ7

母親の悲しそうな顔から一転、雨の降る屋敷の光景が広がった。

屋敷には黒い喪服に身を包んだ人達が集まっている。
屋敷の入り口には『阿倍梅乃葬式会場』と書かれた看板が立っている。

中也の鼻を、線香の匂いと煙が横切った。

さめざめと泣く人もいれば、集まってコソコソと何かを話し合っている人もいる。


『まさか、あの梅乃様が…』

『5年ほど前から体調を崩しておられたそうな…』

『まだ25でしょう?若いわね…』

『夫と娘を残して逝ってしまわれたとは…』

『あの子、可哀想に…』

『殺生石に触れたのが仇となったか…』

『あの梅乃様の後を継ぐのは考えてみても梅乃様の妹君である玉梓様では…』

『いや、○○様じゃろう。玉梓殿は、暗い噂が付いて回っておる。何でも奴等に魂を売ったとか…』

『莫大な遺産、全部あの娘たちに支払われるのかよ』

『巴様も大変だな。…残念だが、あの子に一族をまとめる事は無理だろう。まだ齢五つだものなァ…』

その言葉に、中也は少しばかりカチンときた。

この者達は遺族をいたわるどころか、家督や財産の話に夢中だった。

「(冷たい奴等だ)」

気分を悪くした中也はさり気無く、葬式会場に入って行った。

お経が絶え間なく唱えられる重い空気の中で、あの少女が母親の遺影を持って父親らしき人物の隣に立っていた。

その顔には笑顔はなく、目は光を失って今にも崩れ落ちそうな印象を与えていた。

少女の父親は彼女の肩を抱き寄せると呟いた。

『…ごめんな、○○。泣いて良いんだぞ』

『泣いてなんかいません。…そういうお父様こそ』

父親は『そうだな』と震えた声で答えた。



中也は居た堪れなくなって、速やかにお焼香をあげると、会場から出た。


暫くすると、少女が親族らしい人間たちに話しかけられていた。

『ねぇ、○○ちゃん、お姉さん、○○ちゃんのお母さんになってあげるから、遺産は私に預けてくれない?』

『こんな人より、ね、おじちゃんのとこに来なさい、ね?悪くはしないよ』

どうやら少女の遺産目当てらしい。とんだ屑どもだ。
それを見つけた父親が怒声で追い払う。

『大丈夫か?何かされてないか?』

『ううん、されてない。ねぇ、お父さま』

『ん?』

『お母さま、ちゃんと極楽浄土に行けたかしら…』

『……ッ。…うん、母さんは心が清らかだから、きっと御釈迦様が迎え入れてくれたさ』

『………そうだね』

父親は彼女を強く抱き締めた。









彼女の一言を最後に、俺の夢は終了した。

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大阪 - リクエストで、学校七不思議か、てけてけお願いします! (2019年4月10日 16時) (レス) id: 513b666ef4 (このIDを非表示/違反報告)
文学少女(プロフ) - はい。一応文スト、という世界線なので、名も少し変化するかと判断して感じを変えました。それとリクエストありがとうございます!調べた後、書かせていただきます! (2019年4月10日 0時) (レス) id: 2d20336b29 (このIDを非表示/違反報告)
秦弓月(プロフ) - 安倍晴明の漢字が違うのは検索避けですか? また、リクエストで「22時48分の足音」と「のどがみさま」をお願いします。 (2019年4月9日 23時) (レス) id: deabd34961 (このIDを非表示/違反報告)
飴玉(プロフ) - 続編だ!応援してます!この作品大好きです! (2019年2月17日 19時) (レス) id: aea70470cb (このIDを非表示/違反報告)
新羅 - 続編おめでとうございます!楽しんで読ませてもらっています! (2019年2月16日 11時) (レス) id: 86749cca2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:文学少女 | 作成日時:2019年2月3日 15時

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