夢で逢えたら (ページ47)

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「私ちょっとお手洗い行ってくる」
一言断って席を立つ。

「熊さん、なんか手伝おうか？」
通りすがりに声をかけてみたけど
「ばーか、いいよ。こんなの忙しいうちにはいんねぇ」
と、しっしっ、と手で追い払われた。

トイレから出て、ちょっとメイク直し。

結構飲んじゃったかな。
週末の疲れも相まって眠い。瞼が重い。

席に戻ると、菅田と吉沢くんが仕事の話に熱が入ってる。この二人本当ワーカホリックだ。人のこと言えないけど。

二人の話に、うんうん、と相づちをうって聞いてると

またガラガラと扉が開く音。

「よお、いらっしゃい。奥あいてるぞ」

その言葉に反射的に振り返る。

仕事帰りなのか、セットされた髪にメガネ姿の会いたかった人。

ちらっと顔を上げた中村さんは私を見つけて目を丸くする。そして、くるりと私の周りを見渡して視線を私に戻すと今度は眉をひそめた。

「A？」
「あ、ごめんごめん。なんの話だったけ？」
「いや、つーかあの人知り合い？めっちゃ見てるけど」
「……。」

菅田の言葉に吉沢くんがそちらを見る。

「あ、中村さん！」

吉沢！空気読め！
名前を呼ばれて中村さんがこちらへ歩いてきて、私の横に立った。

「どーも。えーと吉沢くん、だっけ？」
「そうです。覚えてくださってるなんて光栄です。」
「その顔は一度見たら忘れないでしょ」

吉沢くんがよかったら一緒にどうぞ、とか言ってる。

絶対面白がってるとしか思えない。

「いいの？じゃあお言葉に甘えておじゃましよかな」

あいていた私の隣にすわると一瞬視線をおとしてまたちょっと睨まれた。
なに？

「こん、ばんは、」

「A。あんまり飲むなっつってんのに。おまえは。」

私の頭に手を置いて髪をわしわしと撫でる。
「ちょっとやめてくださいよ」
ボサボサになる！

急に近くなった距離に心臓がくちからとびでそう。

ボサボサになった髪を直そうと抵抗してると
うりゃ、と謎の掛け声。と同時に中村さんが脱いだジャケットを頭に被せられた。

「もう！なんですか」
「持っといて」
「え、ハンガーかけときます？」
「いい、膝の上おいときなさい」

膝？
あ、スカート。
気にしてくれたんだ。

きゅうっと胸が苦しくなる。
ハートなんて実態はないはずなのに、中村さんの言葉、行動ひとつひとつに反応する。

こんな感覚久しぶりでちょっと戸惑ってしまう。