夢で逢えたら (ページ45)

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「おそー」

電話から聞こえたのはふわぁんと間延びした声。

「すみません、ちょっとバタバタして。鍵受け取りました」

「ん。よかった。なにしてんの？」

「いま、お風呂入ってました」

「全然連絡こなくて心配してるオレを放おっておいて」

「すみませんってば…中村さんはお仕事終わったんですか？」

「ううん、まだかかりそうかな。」

ちょっと眠たいからか中村さんの声がいつもより舌足らずでフワフワしてる。かわいい。

「遅くまで大変ですね。」

「んー、ちょっと疲れてたけど、Aの声聞いたら元気でた。」

不意打ち。
ズキューン！と胸を撃ち抜かれた。
ドキドキする胸をおさえて息絶え絶えになりながらも平然を装う。

「そうですか。それは…よかったです」

「ふふ、棒読み」

「男の人のリップサービスなんていちいち信じてたら私の心は傷だらけです」

「あはは、心外だな！おっと、ごめんもう戻らなきゃ」

「あ、はい。」

「またそんな顔する」

「顔なんて見えてないでしょ」

「ふふ、声がそんな声だったから。じゃあ東京帰ったら顔見に行くか。オレ今大阪なの」

「そうなんですか…」

今朝は一緒にいたのに、いまはそんなに遠くにいるんだ。やっぱり忙しいんだな。

「お土産買ってくね」

「はい、あ！無理しないでくださいね、」

「ほいほーい。じゃおやすみ」

「おやすみなさい」

電話を切ったあともちょっとぼんやり。
中村さんの声が脳内再生されてる。

私本当に大丈夫なのかな。線引きなんて言ってるけど、できてるとは思えない。
考え始めるとネガティブになるのが私の悪い癖。

「ダメだ、寝よ」

フラフラとベッドに向かって布団に潜ったら

中村さんのにおいに包まれる。

昨日の抱きしめてられて眠りについた幸せな時間。

目を閉じてむりやり思考を停止させた。

朝、鏡の前でくるっと回って全身を確認。

前は仕事やりにくいし、パンツしかはかなかったけど、最近はスカートを選ぶようにしてる。

理由は単純
人に見られるとキレイになるらしいから。
スカートをはいて、少しでも女らしさがでるならいくらでもはく！

出したら痩せるっていうし…。
おかしくないよね？
タイトスカートにシャツを合わせて、パンプスもヒールの少し細いものにした。

はじめはなんだか落ち着かなかったけど、背筋も伸びるし、仕事をしてるうちに慣れてきて最近は気に入ってる。