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男より仕事ができたらダメ。可愛げがないとダメ。そうかと思えば見た目ほどできないんだね、みたいな意味のわからないダメ出し。

そういうのにいちいち傷つくのも疲れた。


「否定はしませんけど、みんながみんなじゃないでしょう。現に菅田先輩がいい例ですよ」

「あれはマイノリティよ。それだって、私中身は本当はそれほどしっかりしてないし。付き合ってみてガッカリした!って言われるのも、もうウンザリ」


「だから付き合わないんですか?」

「いや、まあ。それだけじゃぁ…ナイけど…」


好きな人がいるからとは言えなくて濁す。
吉沢くんの目がツーっと細められて、右の口角があがった。

「へぇ…」

「なによ、」

「やっぱり好きなんですね」

「?」

「中村倫也」

「!」

この子やっぱりスペックホルダー!
心の中読むのやめて!
思わずちょっと後ずさる。

自分の中で気持ちははっきりしてたけど、人から改めて言われると、自分でも驚くぐらい動揺した。

みるみるうちに顔が熱くなるのがわかる。

そんな私を見て、さっきまで鬼の 首をとったような顔をしていた吉沢くんが、真顔になって目を見開いた。

「なんですか、その茹でダコは…!」

吉沢くんが口元に手を当てて項垂れる。


「Aさんにそんな顔させるってちょっと、ヤバイわ…」



みんなしてそんな顔そんな顔って。そんなこと言われてもわかんない。
間違いなく顔が赤いことはわかるけど。
熱くてパタパタと手で扇ぐ。

一刻も早くここから逃げ出したい。
腕時計の時間を確認すれば、もうすぐ昼休みが終わる時間。
いつまでもこんなことしてらんない。仕事はきっちりやらないと!

「吉沢くん、そろそろ戻ろ!」

気持ちを切り替えて、すくっと立ち上がり、フロアに戻ろうとすると慌てて吉沢くんに腕を掴まれて引き止められた。

「ちょっと待ってAさん!俺そんな顔のAさんと一緒に席に戻ったら、菅田先輩に確 実に瞬殺されます。せめてその真っ赤な顔戻してから!」

「瞬殺…」

「オレとばっちりで死ぬなんてマジで嫌なんで。先戻るんで、後にしてください。」

それだけ言い捨てるとスタスタと私を置いて階段を降りていった。

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作成日時:2019年3月19日 20時

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