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「なにこれ」

バスルームから出てきた中村さんはお風呂上がりのほわほわな湯気と色気を纏って、あからさまに嫌な顔をしてる。

中村さんがバスルームに向かってから、自分の押され弱さにしばらく呆然としてたけど、着替えやタオルを出さないといけないと気がついて寝室へと急ぐ。

中村さんが着れそうな服なんてあったかな。

クローゼットを開けて探して見るけど当たり前にレディース。
どうしよう。

かくなる上は、と棚の上に置いた紙袋。

そこから取り出した某スポーツブランドのセットアップ。袋から出してタグを切って広げてみる。
うーん、かわいい。
弟の誕生日プレゼントに買ったものだけど、仕方ない。


シャワーの音にドキドキしながら、ここに置いときますね!と声をかけて服とバスタオルをバスルームの前に置いた。



お風呂から出てきた中村さんは、今日は下りていた前髪も洗いざらしの髪はうっとおしいみたいでオールバックにされていて、鼻筋の通ったきれいな横顔がはっきり見える。

大人の色気となんだかわからない可愛らしいさが同居していてズルい。
一つくらい分けてほしい。

だしておいた服のサイズが少し大きいのか鎖骨がのぞいてる。不満そうに萌え袖をプラプラさせて、私に向かってさっきと同じ質問をした。

「なにこれ」
「パーカーです」
「知ってるわそれくらい」
「え?着替えないと寝にくいかと思って」
「それはありがとう。でも違う」

律儀にそこはお礼を言うんだ
何が言いたいの?と首を傾げれば、

「おれはいったい誰の服を着せられてんの?メンズでしょ、これ。オレでも大きいもん。」

「誰のでもないです。新品なんで文句言わないでください。中村さんが着れる服はそれしかないです」

「ふーん。新品のメンズ服ねぇ」

相変わらず長い袖をプラプラさせて服をジロジロ見回してる。

元カレの服とか思われたのかな。
でも弟への誕生日プレゼントですって言うのも、なんか恩着せがましいし

なんにも後ろめたいことしてないのに、嘘がバレそうな子供みたいにドキドキしながら
こっそり中村さんを見ると

「じゃあ今日からオレのでいいよね」

と何でもないことみたいにさらっと言った。

この人は。
今日からって、先があるってこと?
また来てくれるの?
そんなこと言われたら待ってしまうのに

「お好きにどーぞ」

冷静に、大人の女を装って。
確認するような重いことは
口に出しちゃいけない。
また会いたいなら

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作成日時:2019年3月19日 20時

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