夢で逢えたら (ページ33)

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吸い寄せられるように、ふらふらと足の間にストンと座れば、腰にまわった腕に引き寄せられ、中村さんの胸に体重を預ける。

とくん、とくん

触れてるところから伝わってくる鼓動と体温が心地いい。緊張して固まってた体から力が抜けていく。

あったかい。

私の髪を撫でる大きな手。
スルスルと滑らせて、親指で頬を撫でて、唇を撫でて、そっと顎を上げられる。

キスされるって、ぼんやりと思った。

目の前の中村さんの顔が優しく微笑んで

そして

頬を思いっきり横につねられた

「！？」
「……ぶふ！」
「…いひゃいでふ」
「んふふ」
「はにふふんへふは！」
「あははは、何言ってんのかわかんない」

私の変な顔をひとしきり笑うと手を放して呆れたような顔をした。

「こんなすんなり男を家にあげんなよ」
「誰でも上げるわけ無い！」
「じゃあ、もしマキタが困ってたらどうすんの？」
「無視ですね」
なんで牧田が出てくるのかは謎だけど、当たり前！死んでも入れない。

「即答！…じゃあ菅田は？」
「菅田は…入れません。」
さすがに好意を持たれてる相手を家に上げるのはまずいと私でもわかる。

「へー。じゃあ吉沢くんだったら？」
「まあ、吉沢くんならソファぐらいは貸してあげてもいいかな」
「上げてんじゃねぇか」
「選んでますよ！私だって。後輩だしかわいそうでしょ。」
「A見る目なさそー」
「それは…否めませんけど」

だろーな、と首をこてんと横に倒して、つめたーい目で私を見る。

無言の圧力

「…以後気をつけます。」
「よろしい」
「じゃあ、お出口はあちらです」
「はぁ？なんで？」

玄関の方に手をやれば
眠そうだった中村さんの目がまんまるに。

「だって男上げちゃだめなんでしょ。なので、お疲れ様でした」
「やだよ、オレ今日泊まってく」
「何勝手に決めてるんですか！言ってること無茶苦茶！」

聞こえませーんとツーンとそっぽを向いて、ちょっと頬を膨らませてる。
なんなのムカつくかわいい！
本当に30超えてるのか！

ちょっと黙った私をちらりと見て、ニィーっと唇が弧を描く。

「一晩共にした仲でしょ」
「そ、れ、は…」
「はい決まりー。シャワー借りるね」

ルンルンでお風呂に向かっていく中村さんの背中を見送る。

押し切られてしまった…。