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菅田と話すタイミングも熊さんに会いに行くタイミングもわからないまま、仕事を理由にズルズルと先延ばした。

そんな私を吉沢くんは「Aさん仕事できるくせにほんと不器用」と言って呆れている。




「もう!ホント最悪ー…。」

ノー残業デーだった今日。
仕事帰りに美容院の予約を入れて、いつもよりちょっといいトリートメントをしてもらい、サラサラになった髪でルンルンで家に帰ろうとしていた。

のに…。


「スマホ忘れるとか、なにやってんだろ」

いくら鳴らないスマホだといっても、会社に置き去りは困る。

他の会社も入ってるから、1階やエレベーターには人がいたけど、自社フロアに上がると当たり前だけど、シーンとしていてちょっと怖い。


はやくとってかえろ…。

コツ、コツ、私の足音が廊下に響く。

自分のデスクの上にスマホを見つけてホっと安心したのも束の間、背後に何かの気配。

「おい」
「ひいっ!」

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!

「おい、A!」

すいません!私にオバケの知り合いはいません!

「誰がオバケだ」

おそるおそる振り向くと見覚えのある濃いーい顔。

「す、菅田!もう!驚かさないでよー、心臓止まるかと思ったぁ…」
「おまえこんな時間になにやってんの?」
「あ…スマホ忘れて」
「あー。なんかガタガタ震えてる音してたのお前のか。誰がスマホなんか忘れてんのかと思ったら」
「悪かったわね!」

あ、またイヤな言い方…。

「………。」
「………。」

変な沈黙。きまずい。

いやいや、今謝らなきゃ。またタイミング逃しちゃう。

「菅田!
あの、この間のことなんだけど!」

突然大きな声をだした私に菅田は目を丸くした。

そんなにじっと見られると緊張するんですけど。

スー、ハー

と軽く深呼吸。よしっ!

「ごめん、菅田!ひどい態度とった。全面的に私が悪かった。本当にごめんなさい!」

勢いよく頭を下げる。


「………。」
「………。」

今日二回目の沈黙。

何か言ってほしい。

「オレさぁ、」
「う、うんっ!」

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作成日時:2019年3月19日 20時

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