夢で逢えたら (ページ19)

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店から出て左を向けば、少し先に追いかける背中が見えた。

「中村さん！」

私の声にふざけて、くるんとターンするみたいに振り返って、私の姿を見ると少し困った顔をして笑った。

「あらあら」

って、わがままな子供を相手するみたいに言うけど

それでも私が追いつくまでそこで立ち止まってくれていた。

「中村さん、」

「男といるときに他の男追いかけてくんのはまずいんじゃない？そういうの傷つくのよ、男は」

「男、男うるさいな！あれは後輩です！男じゃない！」

「男は男でしょ。しかも超絶美形の」

「超絶美形の後輩です。なんなんですか」

「べーつーにぃ」

べつにって…、口尖らせて、子供か！

「いたなら声かけてほしかったです。」
「他の男と飲んでるとこ声かけるほど無神経じゃないよ。オレ常識ある大人よ？」

呆れた顔で私を見る。
子供みたいな態度取るくせに急に大人になってズルい。

「Aも楽しそうだったしね」
「まぁ、そうですね。後輩と飲みって初めてだったんですけど、思いがけず楽しかったです。」

今まであまり会社の人と仲良くなる機会がなかったのもあって、ちょっと嬉しかったから、つい顔がニマニマしてしまった。
それを見て中村さんがちょっと眉をひそめる。

「なんかちょっとムカつく」
「ムカつかれてる意味がわかりません」

ムカつくとか言いながら、私に伸ばした手は

また髪を撫でて、毛先をあの綺麗な指で絡めて遊ぶ。

「…髪に触るの好きですね」

「ほんと？無意識だわ」

無意識に誰にでもそういうことしてるのか。してそうだな。
そしてみんな勘違いしてそう。
私みたいに。

「さて、もう戻りな」

中村さんの指からはらりと髪がおちた。

どこも繋がっていないのが寂しいと思ってしまう。

「待たしてんでしょ、後輩」

そうだ。吉沢くんのこと忘れてた。
今日はお礼のご飯だったんだ。