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そろそろ私達も帰ろうかなぁと思っていたら、誰もいないと思っていた奥の個室のドアがガラガラと開く音。


「熊さーんチェックしてー」



聞き覚えのあるよく通る声。
男の人にしてはちょっとゆるーい喋り方。



「おお、もう帰んのか?今日は早いな。
いつもありがとうな」



そして奥の個室を使う限られた人。



聞き間違え?
ううん、絶対そう!


何かに痺れたみたいに動けなくなって、人が出てくる気配に、勇気を振り絞って振り向こうとしたら

頭にぽすん、と大きな手が乗っかった。


「A、飲みすぎんなよ」


やっぱり!

「中村さん!」
「どーも。」

振り返ると、ニッコリ笑う中村さん。


「私がいるの知ってたんですか?」
「Aの声でかいもん。」
「ひどっ。いるなら声かけてくれたらいいのに」

話しかける私をよそに、中村さんの視線は横にいた吉沢くんをじぃっとみつめてる。


「………?」
「きみ、マキタ?」
「は?いえ…」
「じゃ、スダ?」
「いえ、ちがいますけど、」
「なんだよー、A、お前男多すぎ」
「な!」
「ぼくは吉沢です。吉沢亮。」
「ちょっと中村さん!会社の後輩に誤解を招くようなこと言わないでください!」
「ふーん後輩かぁ。ただの?ただの後輩?」
「ちょっと、中村さん!」
「…そうです。」
「ふーん、」

なんだか不満顔で吉沢くんをみて、今度は私にチラリと視線をよこした。

「ウワキモノー」
「はぁ?」

何言ってるのこの人?

「こら、倫也!いい加減にしとけ」

熊さんが呆れた顔で割って入ると

「あはははは!ごめんごめん!オレが飲みすぎてんな。んじゃ、邪魔者は退散しまーす。」


と笑いながら手をヒラヒラさせて中村さんは店を出ていってしまった。

「………。」
「………。」

「なんだ?倫也。ごめんな、いつもはあんな絡んだりしないやつなんだけど。悪く思わないでやって。」

「いえ、大丈夫ですよ。」
「………。」
「…A先輩?」
「吉沢くん、ちょっとごめん!」
「えっ!」

突然立ち上がった私に、吉沢くんが目を見開いて驚いてる。
「おいA!」
「すぐ戻る!」

熊さんの声を背に店から走り出た。

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作成日時:2019年3月19日 20時

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