- 赤 ページ31
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「おいしい？」
「せかいいちうまい」
「んは、大袈裟っ(笑)」
そう君は笑うけど、俺は本気で言うてるで？
世界でいちばん美味い君のご飯をこの先も一生俺のために作って欲しい、なんて言ったら君はどんな反応をするだろうか。
久々に向かい合って食べるご飯は、お箸と会話が止まらない。他愛もない話、この間のロケはこんなだった、だとか、この間淳太が、だとか。
俺がどんな話をしてもニコニコと聞いてくれる君のおかげで、ご飯だけで1時間半も使ってしまった。まぁでも、夜は長いしいっか、なんて。
休みの日の前の日の夜、至福の時。一緒に見ようね、と約束していた映画を見ながらふたりで摘むポテトチップスは、今まで食べたポテチの中でいちばん美味い。
袋から1枚取り出して、口にくわえたまんま君の肩をポンポンと叩くと、照れ笑いしながらも小さな口で咥えて、パリッといういい音を立ててはんぶんこ。
「んフフ、んまッ」
もう俺の目は、映画になんて向いてなくて、隣に座る世界でいちばん可愛い君に釘付け。きっと君も、もう目の前の映像なんて、見ていないでしょ？
さっきよりも深く、もっと深くへ口付けた味は、ポテチの味。なんてムードがないんだ、と思われると思うけど、これが俺たちのいいところ、なのかもしれない。
唇を離すと俺たちを繋ぐ銀色の糸。アァ離れてしまう、この先もずっと、君と繋がっていたいのに。
「…しげ、ベッド、」
「シャワー、浴びんでいいの？」
「…イイ、はやく、しげがほしい」
綺麗好きの君がそんなことを言うなんて、よっぽど寂しい思いをさせていたのか、と少し反省。
はやく、と目で訴えてくる君を姫抱きすると、嬉しそうに笑う君。アァ、どうして君は、そんなにも。
コワレモノを扱うかのように、そっと、ベッドに下ろすと性急に求めてくる君の唇に、俺はもう限界。
「どうなってもしらんで、」
「…あした、デートしたいから、その分の体力だけはおいといて」
「…善処します、」
アカンっ、ちゃんとセーブしてや！なんて笑うけど、俺のことをこんなにしたのは、君だから。
悪いのは、全部君だから。俺は何も悪くない。
さぁきょうも、長い長い夜が、始まる。
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作者名：ル | 作成日時：2022年10月10日 12時
