- 緑 ページ3
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「研究、ですか…」
大毅、もとい008について連絡が来たのはその日の夜のことだった。
大毅を研究に使いたいから、明日の昼、迎えに行くとのことだった。
研究がうまくいけば、人間にも不老不死の力を与えることが出来るかもしれないだなんて。
俺からすれば、ラッキーな話だった。
俺の手を汚さずに、前の、元にいた居場所へ戻れるのだから。…前までの俺なら、喜んでいたはずだ。
一晩中考えていた。隣に眠る大毅の寝顔を見て、愛おしさを感じながら。
「…大毅、」
頬をするりと撫ぜると、寝ているのにまるで猫のように擦り寄ってくる姿が可愛くて、また、胸が鳴った。
大毅を手離したくない、ターゲットであるはずだった彼に恋をしてしまった事実を、認めざるを得ない。
その日は大毅になにも言えずじまいだった。朝はいつも通りに起きて、朝ごはんを作って、それを食べた大毅が美味しい、とにこにこしながら頬張って。
穏やかな空気が流れる中、お昼頃にドンドンとドアを叩く音が聞こえた。
『__神山、008を引取りに来た』
終わりを告げる、声だった。大毅は不思議そうな顔で俺を見るが、俺は、大毅の方を見れなかった。
ドアを開けると、3人の見慣れた研究員。いままで共に切磋琢磨してきた仲間だった。
「…神ちゃん、これ、」
何かを察したかのように、逃げようとする大毅を研究員たちが押える。俺は、ただ見ることしか出来なかった。
3人がかりで身を拘束されても尚、抵抗を続ける大毅を俺は、俺と言うやつは___
「神ちゃ、ん…!!!」
大毅がそう、俺に訴えかけるように叫んだ瞬間、俺の中のナニかが切れて。
気づけば、大毅と出会ってからずっと封印していた銃を手に取り、そのまま発砲していた。
ターゲットである大毅ではなく、かつての仲間へ。
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作者名:ル | 作成日時:2023年3月9日 10時