55. いい、わるい ページ5
.
「良くは…ないですけど」
「だよねえ」
「でも、それって私のわがままだし」
「…」
そう。ボラムちゃんの仕事を私の勝手な感情で妨げるわけにはいかないのだ。
「…いいです、帰ってくる場所は同じだし」
「そっか、じゃあそういう風にしとくわ」
「すみません…ありがとうございます」
「自分で言い出したんだからそんな顔しない(笑)」
「はい…」
「大丈夫だよ、多分。ダメだったら戻せばいいよ」
テイルさんの言葉は、適当に見えていつも温かくて的を得てる。
私がボラムちゃんに席替えられるって、と伝えると、ボラムちゃんは立ち上がって喜んだ。
…嫌じゃないけど、嫌な感じだ。
替えてしまったことをとっても後悔するけど、後悔したところでもう遅い。
内心モヤモヤマックスなのに、良い子のフリをして変わってあげたのは私で、この先何かあっても責任は私にある。
席に戻ったら、椅子を引こうと私が手を出す前にジョンウが私の椅子をサッと引いてくれた。
目線はパソコン。かっこいいけど、いつもそんなことしないのに何だろう。
「テイルさんと何話してたの」
「んー」
「言えないことなの」
「いや？」
「じゃあ何」
「席替えの話」
「席替え？」
「私とボラムちゃんの席が入れ替わるの」
お互いノールック、かつ小声で会話していたのに、ジョンウは「は？！」と大声を上げてこちらを見た。
「し！」
彼を制して座らせる。
だから言いたくなかったのに。
「何で？何で変えなきゃいけないの？」
「ジョンウとの仕事が、あの席だと進めにくいんだって」
「仕事しづらいも何も、携帯で連絡取れるのに…だめ、却下ー」
そっか。連絡先知ってるのか、そうだよね。
当たり前。私だってテイルさんの連絡先も、他の男の子の連絡先も、必要な子の分は持ってる。
ずきっとあからさまに音を立てる胸を押し殺して、苦笑いした。
「仕方ないよ…私だって断りたかったよ」
「断ればよかったのに」
「断るほどのことでもなかったから」
「ふーん、モモはそれでいいんだ」
良くないってば！！
と言いたいけど、ジョンウが怒らせたくて言っている訳ではないということを、私はよーく分かっている。
「私がやだとか、そんなわがままはちょっとね、大人として」
「お子ちゃまのくせに何言ってんだ」
そう言ってジョンウは私の口に、スースーしない甘いミンティアを放り込んだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1309人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もゆ - 神作品の記念すべき400票目の投票をさせていただきました…！2作品分？一気に読んだのですがもう、他ペンの私から見てもジョンウってこういうあったかい人やんね〜っていう謎の共感?!というか人柄が綺麗に表現されてて感動しました！ありがとうございました！！ (2021年5月21日 0時) (
レス) id: a156f1d191 (このIDを非表示/違反報告)
Sar - やっぱり天才です(涙) (2021年5月10日 16時) (レス) id: 3eb67c9a03 (このIDを非表示/違反報告)
peko(プロフ) - はじめまして！面白くて一気読みしてしまいました！(笑)結末まで可愛いのがさすがキムジョンウ！ってなりました！！キュンキュンもありモヤモヤもあり…でもキュンキュンさせてくれる素敵なお話でした！どうか結婚まで…と続編を希望してます！笑笑 (2021年4月29日 21時) (レス) id: a8c9f227dd (このIDを非表示/違反報告)
ハリ(プロフ) - ろんさん» ろんさまお返事遅くなって申し訳ありません(TT) その一言が頂けたことが最高にうれしいです…楽しんで頂けたなら本当に良かったです。読んでくださってありがとうございました(TT) (2021年4月21日 21時) (レス) id: 86d42c940d (このIDを非表示/違反報告)
ろん - 凄いきゅんきゅんしました（しあわせ） (2021年4月9日 20時) (レス) id: 687bfe2f8c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハリ
| 作成日時：2020年12月18日 12時
