舞台裏にて ページ33
開演まで残り十分を切り、楽屋から舞台裏まで移動してきた俺達。
「うわっ……」
「……うるさい」
近づくにつれ、幕越しにも関わらず聞こえてくる大勢の観客達の声に、春組メンバー全員はあからさまな動揺を見せる。
その光景に、俺は笑いが零れそうになるのを耐えていた。
まぁそりゃそうなるよな。
俺も初めて千秋楽迎えた時はそんな感じだったし。
「これが千秋楽……」
「流石最終日。盛り上がりが違うね」
ここ数日の公演を超える何倍もの熱気に、皆の表情が緊張で強ばっていく。
(本番前にまずいな……)
このまま舞台に上がらせるのは危険だ。本編以上のアクシデントが起こりかねない。
そう思って何かしら声をかけようとしたが、それよりも早く監督さんが動いた。
「こんなに沢山のお客さんが来てくれたのも、皆が一生懸命に頑張ったからだよ」
この場の雰囲気に飲まれる事なく、普段と変わらない様子の監督さん。
そしてその言葉を聞いて、それぞれがこれまでの練習を振り返る。
「……ここまで来たら、もうやるしかないですよ!」
「だよな。やれるだけの事はやってきたもんな」
「ワタシも頑張るヨ〜!」
決意を固めた全員の目からは、強い意志と自信が感じられた。
それを見て、俺と監督さんは互いに顔を見合わせて笑う。
(やっぱ凄いな)
皆の緊張を察して、尚且つそれを和らげる。
そう簡単にできる事じゃないだろうに。
……まぁ、狙ってやった訳じゃないのかもしれないけど。それでも凄いよな。
一人関心していると、やってきたスタッフによって残り五分を切った事が知らされる。
「落ち着け俺……!」
「っ……」
やっぱり監督さんの後押しがあっても緊張はしてしまうんだろう。この世に緊張しない人間なんてそういない。
至さんなんて黙り込んだままだし。
(……よし)
こういう時こそ、助監督である俺の出番だ。
まだ表は騒がしいし、観客達には聞こえないだろう。
俺は一息吐いて気合を入れると、両の手を一度遠ざけ、それから一気にぶつけ合わせる。
ーーーパァンッ!!
俺の手から生まれた衝撃音に、案の定全員が驚いてこちらを見てきた。
それがあんまりにも呆けた顔で。
「はは、皆固すぎ」
おかしくてつい笑ってしまった。
そんな一人陽気な俺に対し、クエスチョンマークを浮かべている皆。
俺も笑うのをやめ、人差し指を立てる。
「実はもう一つまじないがあるんですけどーーー」
本番開始まで残り四分強。
それだけあれば十分だ。
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祐(プロフ) - こずめさん» お返事遅くなりました!(名前変わっててすみません)もう文章からこの作品を好いてくれてるのが凄く伝わってきます私も貴方様が好きですありがとうございます。夏組編もよろしくお願いします! (2018年7月21日 23時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - みかさん» お返事遅くなりました!本当ですか!?みかさんのA3!との出会いに関われたなんて嬉しいです!この作品書いてて良かったです・゚・(つД`)・゚・ (2018年7月21日 23時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - イオリさん» お返事遅くなりました!そう言って貰えて凄く嬉しいですヽ( ´ ▽ ` )ノ私も夏組大好きです! (2018年7月21日 23時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 翔香さん» コメントありがとうございます!大変お待たせ致しました!またこれからゆっくりではありますが続ける所存ですのでよろしくお願いしますヽ( ´ ▽ ` )ノ (2018年7月19日 16時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - Lilyさん» コメントありがとうございます!初期の頃からずっと支援してくださっていたなんて嬉しい限りですヽ( ´ ▽ ` )一応冬まで続ける所存ですので、これからも読んでやってくださいませ\( 'ω')/バッ (2018年7月19日 12時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:祐 | 作成日時:2018年3月13日 10時