【A3!】舞台から落ちたら演劇の世界にいました３【男主】

今のうちから ページ20

｢結構広い店なんだな｣

｢うん。取り揃えもいいからよく来てる｣

昼食を終え、例の衣装の材料とやらが売っている店に来た俺達。

俺自身買うものはない為、幸に付いて行ってるのだが、こうして材料を見ると、改めて俺の衣装を作ってた方達の凄さと大変さが分かる。

｢そういや、幸は販売とかしてるんだったよな｣

｢まぁね｣

以前サイト見せて貰ったけど、確かに中学生が作ったとは思えないレベルだった。

今度俺もコスプレ衣装作ってもらおうかな。
至さんとthe厨二病みたいなのやりたいし、あの人ならむしろ喜んで着てくれそう。

｢カンパニーの皆も凄いってさ｣

｢当然でしょ。俺が作ったんだから｣

へいへい。
俺もお前くらい強気に生きてみたいもんだ。

その後も熱心に材料を選び続ける幸から離れ、俺は手芸コーナーへと向かう。

(手芸なぁ……)

前の世界でやってはいたけど、せいぜい移動中とかに趣味でーってレベルなんだよな。
元々手先を使う系とかは結構好きだから。

……けど多分、それじゃ話にならない。

もし何も知らないままだったら別にやろうとは思わないけど、あの衣装がダメになる事件を知ってるとなれば別だ。

(今のうちに練習しとかないと)

もちろん、そうなる前に全力で止める。
けど、最終的に結末が変わらない事はこれまでで重々承知の上だし。

それまでに何としても衣装作成のいろはを覚えとかなきゃならない。

それこそ、幸の足を引っ張らない程度には。

｢何見てんの？｣

｢うわっ｣

驚いて振り返ると、そこには既に会計を済ませた幸が。

｢手芸コーナー？｣

｢あ、うん。ちょっとやってみようかと思ってさ｣

やってみようっていうか、やれるようにならなきゃいけないっていうか。

｢俺もこういうの出来るようになれば、幸の事も手伝ってやれるし｣

呟きながら、目の前にあったキットを手に取る。……げ、思いのほか高い。
まぁでも着るものになると思えば普通なのか。

｢……バカじゃないの｣

｢え｣

そ、それは俺の発想が？それとも俺自身が？
あんまり急でキット落としかけたじゃねぇか。

｢アンタがそこまで言うなら、将来弟子にとってやらなくもないけど？｣

｢え、俺を？｣

｢他に誰がいるんだよ。……ほら、もう行くよ｣

聞き返すよりも早く歩きだす幸に、俺も慌てて後を追う。
嬉しいけど、幸には弟子が出来るからなぁ。

弟子って言うか犬って言うか。

｢また、頼むから｣

｢あいよ｣

少しだけ、幸と仲良くなれた一日だった。

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