他劇団の仲間 ページ25
丞side
MANKAIカンパニーの速水A。
初めて会った時の一件から、俺はこいつの事を気にかけていた。
あの芝居の技術が群を抜いている晴翔を、わずか二言程で黙らせてしまう程の演技力。
(……凄い)
俺でさえ、その演技に悔しくも惹き込まれた。
芝居が終わった後も、晴翔や神木坂さんを必要以上に責めなかった事や、一体どこで誰に芝居を教わったのかを聞きたくて。
その時から既に、俺はこいつと芝居がしたかったんだろう。実際、一緒に舞台に立つ姿を想像すらもした。
ちゃんと謝って、改めて話をしようと思った。
だが。
『私の所に来なさい』
その言葉を聞いて、俺は嫌なものを感じた。
かつて俺の幼馴染に「才能がない」と言い切った時と似たようなものを。
あいつとは違う意味で、神木坂さんによって速水の芝居がダメになる気がした。
もし俺と関わりを持つ事になれば、速水はGOD座との距離が近づく一方になる。
それは危険だ。
そう思って、なるべく離れるよう徹していたというのに。
「俺、貰った恩は返す主義なんで」
まさか自分の劇団のチケットを持って会いに来るなんて誰が思う?
こっちは必死に、胸ぐらまで掴んで忠告してやってるのに。
間に受けて尚、こいつは強気に笑っている。
「お前は分かってない。自分の利益の為なら何だってするあの人の怖さを」
平気で人を駒のように扱えるあの人を。
更に言葉を乗せようとしたが、奴の強い目によってそれは叶わなかった。
「分かってますよ。そういう奴の事は十分に」
やけに悲しそうに笑う速水に、一瞬ではあるが幼馴染を思い出して。
こいつの言葉が本心である事はすぐに分かった。
「お前……」
何があったのか聞こうとするよりも先に、ぱっと陽気な表情に戻る速水。
「大丈夫ですって!なんとかなりますよ多分。うちの団員も皆強いですし」
「だが……」
「それにーーー」
ーーーいざとなったら丞さん、助けてくれるんでしょ?
まるで悪戯な子供みたいに笑いながら言われて、俺は目を見開いた。
どうやら、俺の考えは見透かされていたらしい。
「……俺を使うなんて高くつくぞ」
分かってるのなら一先ず安心だ。
それで折れる俺もどうかしてるが。
自分で笑いながら、三枚のチケットを貰う。
「お礼は演劇レッスンのコーチなんてどうです?」
「へぇ?それじゃあ、丸三日程相手して貰いましょうかねコーチ?」
「……やっぱナシで」
この時、Aとは今後長い付き合いになるだろうと確信した。
1329人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「愛され」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
祐(プロフ) - こずめさん» お返事遅くなりました!(名前変わっててすみません)もう文章からこの作品を好いてくれてるのが凄く伝わってきます私も貴方様が好きですありがとうございます。夏組編もよろしくお願いします! (2018年7月21日 23時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - みかさん» お返事遅くなりました!本当ですか!?みかさんのA3!との出会いに関われたなんて嬉しいです!この作品書いてて良かったです・゚・(つД`)・゚・ (2018年7月21日 23時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - イオリさん» お返事遅くなりました!そう言って貰えて凄く嬉しいですヽ( ´ ▽ ` )ノ私も夏組大好きです! (2018年7月21日 23時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 翔香さん» コメントありがとうございます!大変お待たせ致しました!またこれからゆっくりではありますが続ける所存ですのでよろしくお願いしますヽ( ´ ▽ ` )ノ (2018年7月19日 16時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - Lilyさん» コメントありがとうございます!初期の頃からずっと支援してくださっていたなんて嬉しい限りですヽ( ´ ▽ ` )一応冬まで続ける所存ですので、これからも読んでやってくださいませ\( 'ω')/バッ (2018年7月19日 12時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:祐 | 作成日時:2018年3月13日 10時