【A3!】舞台から落ちたら演劇の世界にいました２【男主】

心機一転 ページ10

怖い夢が、優しい夢に変わって少し。

アラームの音や誰かに起こされた訳でもなく、ただ自然と目が覚めた。

(……寝落ちしたのか)

瞬間的に視界に入ってきた舞台の天井を見て、ぼんやりと考える。

｢今何時……って、え｣

置いてきたスマホの事を思い出しながら、どうにかして時間を知ろうとした時。
ようやく誰かに手を握られているのが分かった。

(咲也？)

握ってると言うよりは、俺の手を上から掴んでいるって感じだけど。

ここに咲也がいるってことは、皆もここにいるんだろう。そう思って周りを見たら、案の定春組全員が寝ていた。

つまり、俺はいつの間にか春組の代表的とも言えるシーンにちゃっかり参加していたと。

(気付かず爆睡とかもったいな……)

そう思ってしまうのはゲーマーの性か。
考えてみれば俺、昨日結局帰ってないんだよな。

布団まで一緒に使わせてくれて。俺なんてそのまま床に放っといてくれてよかったのに。

何か怖い夢を見ていた気がするけど、それを思い出せないのはこうして咲也が手を握ってくれてたおかげかもしれないな。

それにしてもあのクソオヤジ(呼び方は変えない)に論破されて一人劇場に逃げ込み、挙句の果てにはこうして手を繋ぐ程咲也に心配され。

(我ながら情けなさすぎる……！)

黒歴史確定じゃないですか。泣いてる所まで見られてたらどうしよう。いやそれは無い……筈。

至さんに小声で謝りながら、ゲームの電源を入れて時間を確認する。なんでこの人は携帯よりもゲーム枕元に置いてんだよ普通逆だろ。

……午前4時か。
寝落ちしたせいで一切思考纏まってないけど、とりあえずは監督さんに夕飯のお礼なり謝罪なりしないといけないよな。

ノート勝手に渡しやがった件についてもみっちりお話しようではありませんかえぇ。

ってそうじゃん今日からまた三日間カレーじゃん。支配人また鍋ひっくり返したりして。

乾いた笑いを零しながら、皆を起こさないよう静かに布団を抜け出す。

カレーの話に戻るけど、俺あえてカレー用の食材買ってないんだわ。なのに監督さんが作るカレーにはちゃんとカレーの具材入ってんの超怖くない？

もう寮に畑あるか最悪あの人が食材を物理的に生み出してるとしか思えないぞ。

｢咲也……手、強……っ！！｣

お前絶対起きてるだろって位がっしり掴まれていて、剥がすのにかなり苦労した。

｢……ありがとな｣

最後に咲也の頭を撫で、劇場を後にする。

まだ答えは出てないけど、一度ゆっくり考ようと思う。

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