話す決心 ページ38
咲也side
目が覚めた時、辺りはすっかり暗くなっていた。
(今、何時だろ)
時間が知りたくて携帯を探そうとすると、俺の頭上から規則正しい寝息が聞こえてきて。
誰かと思って顔を上げれば、そこにはAさんが俺の肩に腕を回し、抱きしめてる状態に近い体制ですやすやと寝ていた。
「っ!?」
思わず声が出そうになって、慌てて口を抑える。男二人なだけあって少しきついけど、俺もAさんも細身だからそこまで苦しくはない。
けど、なんでAさんと二人で俺の布団に?
確か朝練してて、俺があの時……。
思い出そうとすると、すぐに浮かび上がってきた。
同時になんでAさんが俺の部屋の、それも同じ布団で寝てたのかも。
(そっか。俺がAさんの手を握ったまま寝ちゃったから……)
こうしてずっと、俺が起きるまで一緒にいてくれたんだ。
俺の気持ちを分かってくれて、気にかけてくれて。手だって解こうと思えば簡単に解けた筈なのに。
「……ごめんだなんて、Aさんのせいじゃないです」
起こさないように気をつけながら、Aさんの服をぎゅっと掴む。
謝られた時、更に泣き出しそうになった。
なんで俺は出来ないんだって、そればかり考えて。
すぐに手を握ってもらって、そのまま寝ちゃったけど。
(っ、そうだ、急がないと!)
ごめんなさいと謝りながらAさんの腕を退け、監督に会う為に部屋から出る。
「監督!!」
それから探し回ること数分後、やっと外に出ていた監督を見つけた。
俺の名を呼び、驚く監督に構わず詰め寄る。
「お、俺の殺陣は……ロミオは!?」
「ちょ、ちょっと待って!」
「待てません!」
どうなったかが気になって、落ち着いてなんていられない。
「安心して!あの後皆と話し合って、咲也くんが大丈夫そうなら続けるって事になったから!」
「ほ、本当ですか!?」
大きく首を縦に振る監督を見て、俺はようやく冷静さを取り戻す。そんな俺を見て、監督は優しく笑っていた。
「元気になったみたいだね。Aくんはまだ寝てるの?」
「あ、はい。俺が起きた時はまだ寝てました」
「もー、Aくんたら咲也くんの手を握ったまま、咲也は頑張るって言ってるから殺陣を外すなって言ってきてね」
ちょっと時間開けて見に行ったら一緒に寝てるんだもん。
呆れながらも楽しそうな監督を見ながら、俺は一人驚いていた。
Aさん、俺の為にそこまで……。
「あの、監督!」
それなら、俺も正直に話さなくちゃ。
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夢花 ゆめいろ星(スター)の夢花(プロフ) - Syuさん» いえいえ! なるほど……あの二人の会話がすごく可愛くて癒されましたwはい!応援させてもらいます! (2018年3月21日 0時) (レス) id: f2643ccfd4 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - rin_arsmateさん» 申し訳ございません。早急に編集致しました。ご指摘ありがとうございます (2018年3月12日 22時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
rin_arsmate(プロフ) - 偽善者が犠牲者になっています。 (2018年3月12日 22時) (レス) id: 4f08260cf0 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 夢花 ゆめいろ星(スター)の夢花さん» ご指摘して頂いた上に感想まで……!ありがとうございます!三角は凄く作りやすくて楽しいです。これからも頑張らせていただきますね (2018年3月12日 17時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
夢花 ゆめいろ星(スター)の夢花(プロフ) - Syuさん» いえいえ!あ、それと、凄く面白い作品ですね!!!本編を知っているからこそ不安にもなるし、支えていきたいのも舞台に立つのが怖くとも演技をやりたいって気持ちも凄く伝わってきて…めちゃめちゃ感動しました!個人的に綴と三角とのシーンがお気に入りですw (2018年3月12日 3時) (レス) id: f2643ccfd4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:祐 | 作成日時:2018年3月4日 17時