【A3!】舞台から落ちたら演劇の世界にいました２【男主】

他劇団訪問 ページ35

咲也が雄三さんに教わりながら殺陣をする事になったある日。
俺は俺で、やるべき事に向け歩みを進めていた。

｢ここだ｣

雄三さんに連れられやって来たのは、俺が客演としてお世話になる予定の劇団の稽古場。

あれから雄三さんが連絡してくれたところ、すぐさま｢ぜひともお願いしたい｣と返事が来たらしい。

……正直このおっさんと知り合いって時点でもう怖いんだけど。俺別にアルファベットの十三番目とかじゃないし、普通に暴力的とかうるさいとか偉そうな人は極力勘弁したい。

あ、全部当てはまる人隣にいたわしんど。

｢分かってるとは思うが、てめぇは世話になる側なんだからな。その辺忘れんなよ｣

雄三さんに言われ、俺は返事をしてしっかりと頷く。大丈夫。俺が年上関係なく口悪くなるのは多分この人にだけだろうし(悪い意味で)

(にしても……)

雄三さんの後ろを歩きながら、やっぱりそういう事ちゃんと考えて言ってくるあたり、この人も教師なんだなと改めて思う。
実際知り合いと連絡取り会えるほどに人脈あるって事だもんな。

苦手だけどそこは素直に尊敬する。

そして扉の前までたどり着き、そのままノブに手をかけた雄三さんを慌てて止める。

｢ちょちょちょ！｣

｢あぁ？んだよ｣

案の定睨まれながら、控えめな態度で話す俺。

｢じ、実は今更ですけど俺人見知りでして｣

｢は？｣

こんなにも素の顔した雄三さんは初めて見た。

はっきり言って、俺はかなりの人見知りである。前の世界でも劇団の皆と馴染むまでに結構時間かかったし。

大体、初対面の人といきなり仲良くするとか普通に難しくない？ラノベなんかじゃよく人見知り言っといて超話せるやつとかいるけどあれ人見知りって言わないから！

咲也達とだって知らなかったら全然話せてないしね俺。

という訳で心の準備がまだ……と言おうとしたのに。

｢うるせぇさっさと入れ｣

ウルトラスーパー激おこモードな雄三さんに強引に入らされました。

＊＊＊＊

いや……その……ね。

結論から言うと、めっちゃくちゃ優しいいい人ばかりでした……。ほんとすいません雄三さんの知り合いだからって疑って。

終いには｢正直客演としてなんてもったいないけど、俺らも頑張るからさ｣なんて言ってもらって。必死にどこか入れる穴がないか探したわ。

｢んで、どうだった？｣

帰り道で雄三さんに聞かれ、いい人しかいなかった事を告げると盛大に笑っていた。

(客演……頑張ろ)

次行く時は何か差し入れでもしよう。

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