ダイヤの原石 ページ24
雄三side
｢ーーーーー！｣
脚本を見ながらに演技を始める速水を見て、俺は久々に自分が高揚している事に気付く。
松川に劇団を助けるよう求められた時、俺は正直全く期待していなかった。全員素人だって話は聞いてたしな。
だが、あいつの持ってきた一冊のノート。団員一人一人を正確に分析し、芝居においての知識がふんだんに使われたそのノートを見た時、
(こいつはすげぇ)
柄にもなくそう思った。しかも書いた奴は例の監督じゃない劇団員だって言うじゃねぇか。
そして当日。懐かしのレッスン室でメンバーを一通り見た瞬間、
｢はい？｣
あのノートを書いた人間が速水だとすぐに確信した。
それこそ俺レベルの役者じゃないと分からないようなもんではあるが、速水の放つ雰囲気は、確かに多くの舞台に立ってきた奴のもんに違いなかった。
(少しは期待できそうじゃねぇか)
そう思ったのも束の間、いざ芝居が始まったかと思えば、そこにいるべき奴はいなかった。
何をする訳でもなく、現監督の隣で呑気に座ってやがる。
全員に批評を言ったあと、思わず胸ぐら掴んじまったじゃねぇか。
しかもいざ話してみりゃただ口だけの糞ガキ。
俺も落ちたもんだと思ったぜ。
……だが、今日のこいつは一味違った。
あの後何したか知らねぇが、奴は奴なりの答えを出したんだろう。
そんな速水の芝居が気になって脚本渡したらこれだ。
(バカみてぇに打ち込みやがって)
あんな生意気な糞ガキを認めたくはねぇが、現にこうして俺が見入る位には実力がある。
周りを見ようとしてる辺り、主役の経験も多かったんだろうな。
あいつらを見届けるっつうのは本当だろうが、それでこいつの役者としての道を終わらせるのは、はっきり言ってもったいねぇ。
ましてや二十一なら、まだまだ伸び代はいくらでもある。
(こいつ、あの劇団の舞台には立てねぇってやけに拘ってやがったな……カマかけてみようじゃねぇの)
そうと決まれば早速。一人で悩みまくってる速水を呼ぶ。
｢……なんですか｣
どうやら、俺に演技を中断させられた事に不満があるらしい。可愛げのねぇガキだぜ全く。
｢お前、芝居続ける気はあんのか？｣
まぁ、あるに決まってんだろうがな。だが返ってきたのは弱々しい言葉だった。
｢……てないんです｣
｢あ？｣
｢だから……その｣
｢ごにょごにょ言ってねぇでさっさと喋れガキが！｣
｢〜〜っ！だから！舞台が怖くて立てないんだって言ってるだろが！！｣
……あ"ぁ！？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 928人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夢花 ゆめいろ星（スター）の夢花(プロフ) - Syuさん» いえいえ！ なるほど……あの二人の会話がすごく可愛くて癒されましたwはい！応援させてもらいます！ (2018年3月21日 0時) (
レス) id: f2643ccfd4 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - rin_arsmateさん» 申し訳ございません。早急に編集致しました。ご指摘ありがとうございます (2018年3月12日 22時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
rin_arsmate(プロフ) - 偽善者が犠牲者になっています。 (2018年3月12日 22時) (レス) id: 4f08260cf0 (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 夢花 ゆめいろ星（スター）の夢花さん» ご指摘して頂いた上に感想まで……！ありがとうございます！三角は凄く作りやすくて楽しいです。これからも頑張らせていただきますね (2018年3月12日 17時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
夢花 ゆめいろ星（スター）の夢花(プロフ) - Syuさん» いえいえ！あ、それと、凄く面白い作品ですね！！！本編を知っているからこそ不安にもなるし、支えていきたいのも舞台に立つのが怖くとも演技をやりたいって気持ちも凄く伝わってきて…めちゃめちゃ感動しました！個人的に綴と三角とのシーンがお気に入りですw (2018年3月12日 3時) (レス) id: f2643ccfd4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：祐 | 作成日時：2018年3月4日 17時
