【A3!】舞台から落ちたら演劇の世界にいました２【男主】

作戦会議 ページ19

例の退団宣言を終え、稽古を解散した後。

俺は自分の部屋に戻り、皆と至さんのやり取りを思い返していた。

｢……｣

多少の不安はあるけど、至さんのいない春組なんて想像もつかないし。

｢温度差ばっかりはどうしようもないよな……｣

世の中何に置いても、人同士感情や思考の違いはある。至さんも無意識の内に、咲也や俺達の｢頑張ろう｣が重荷になっていたんだろう。

自分と同じレベルだった筈の奴らがどんどん先に行くのってかなり怖いもんな。

｢Aさん。起きてますか？｣

ぼんやり考えていると、扉の向こうから咲也の声が聞こえてきた。他にも話し声がするし、多分至さん以外全員いるなこれは。

｢起きてるぞ｣

返事をすると、咲也を先頭に、次いでぞろぞろと部屋に入ってくるお仲間さん達。いや入っていいとまでは言ってないんだが。

(三角来てなくてよかった……)

ほっと胸を撫で下ろしつつ、俺も布団から出て皆と同じように腰を下ろす。
一部屋に男五人はむさ苦しいな。

｢それで、皆揃って何すんの？｣

何しに来たか、なんて聞く必要は無い。十中八九至さんの事だろうし。
察したのか、すぐに真剣な表情で頷く綴。

｢考えたんすけど、やっぱり俺達に出来る事は芝居しかないなって｣

｢ワタシの事務局見せつけるヨ！｣

事務局……まさか実力？いや無理ありすぎて分かんねぇよ。これ至さんいないといつまで経っても解読出来ない奴だわ。

｢俺、至さんに芝居の楽しさを分かって貰いたいです。ここまで一緒にやって来た仲間なのに、お別れなんて絶対したくないです！｣

咲也……。

｢そうだよな。俺も至さんが舞台に立つ所見たいし。それになにより……｣

｢……なに｣

ニヤついてる俺の視線の先で、あからさまに嫌そうな顔をする真澄。

｢いや〜？別に？｣

だってあんな至さんにやめたきゃやめろみたいな事言ってた真澄がちゃんと付いてきてるとかねぇ？

すぐに｢ウザい｣って足蹴られたけど。
そういう優しい一面は大事にしてけよ少年。

そしてやはり決行日は明日の朝で、至さんが会社に行く前にやるらしい。

｢それで俺が至さんを足止めしとくって訳ね。よし任せとけ！｣

ドンと胸を叩き、サムズアップする。例え至さんの身体に縄結びつけてでも時間稼いでやらぁ！

そうと決まればどんな手を使うか。

思考を巡らせ始めた時、脚本家様からお声がかかる。

｢ちゃんとAさんの役もありますよ？｣

｢……はい？｣

何を言ってるのかよく分からなかった。

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