【A3!】舞台から落ちたら演劇の世界にいました２【男主】

ハートクラッシャー ページ15

｢段々良くなってますね｣

監督さんの隣でペンを走らせながら、思っていた事を口にする。どうやら全員専用メニューを組んだのが良かったらしく、順調にそれぞれの役が少しずつだが仕上がり始めていた。

｢Aくんと考えたメニューのおかげだね！｣

花が咲いたように笑う監督さんに、俺もそうですねと笑いかける。

そんな時だった。

｢見つかりましたよ！｣

嬉しそうな支配人が、言いながらレッスン室に入ってきたのは。

そしてその後ろには大きな男と、小さくて可愛らしい……毒舌に定評のある男の子が。

｢瑠璃川幸くんです！｣

｢どーもー｣

うわぁとってもだるそう。
というか支配人と話して大丈夫だったの？
とてもあの歩く騒動と会話が成立したとは思えないんだが。

咲也なんて面接なしの即採用(保護者への連絡なし)だからね。なんとまぁ適当な。

一応｢くん｣てちゃんと言ってたし、今度はちゃんと話し合ったんだろうけど。

にしても中三をこんな借金まみれの劇団に採用する辺り、支配人も人がいいのかアホなのか。いや絶対後者だわ。

＊＊＊＊

……はい。一通り毒舌タイムが終わりました。

元気百パーセントサイコストーカー村人Cインチキエリートインチキ外国人……まさに言いたい放題だな。流石は幸さん。
これが上下関係を知らぬ中三の恐ろしさよ。

特に村人Cな。あの幼稚園とかのお遊戯会で｢ええ！？｣位しかセリフないやつ。
あれ絶対出来ない子への救済措置だよな。

それにしても……

｢インチキエリートは素晴らしい｣

｢声にでてるんだけど？｣

ついうっかり口にしてしまった俺に対し、優しい、とっても優しい笑顔の至さん。もちろん目は一切笑っておりません。

｢それでそっちは？｣

幸さんに聞かれて、俺も自己紹介位はするべきかと名乗る。

｢俺は速水A。ここの家政婦兼監督さんの助手｣

｢俺は認めてない｣

いや真澄が認めなくても。

｢ふーん。偽善者ね｣

｢ぐはっ｣

予想もしていなかったあだ名に、俺は服の上から心臓を抑えうずくまる。
おいおいおい待て待て嘘だろなんだそのあだ名は！？傷付いたぞ！？傷付いたぞ俺の心は！！
誰か救急箱持ってきて！

｢偽善者……ぶふっ｣

｢オー！ピッタリネ〜！｣

｢どこがですか！！｣

絶対意味わかってないだろシトロンさん！というか笑うな茅ヶ崎至！！

｢お、俺はAさんの優しい所好きですからね！？｣

やめてくれ咲也。今はその優しさがただただ痛い。

二十一歳の心は粉々だよ……。

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