脚本家の第一歩 ページ40
綴side
「だって俺ファン第一号だし!」
そう言ってはしゃぎながら頭を撫でてくるAさんに、俺はにやけそうになるのを必死に堪える。
だって嬉しすぎるだろ。自分の全力で書いた脚本を、目の前でこんなにも「面白い」と言ってくれるんだから。
しかもその相手が、俺の事をずっと近くで応援し続けてくれたAさんとくれば、当然顔もにやけるってもんだ。
(よかった。俺の話って、面白いのか)
なんだか自惚れてるみたいに聞こえるだろうけど、Aさんは多分こういう時は面白くなきゃ相手の為に言ってくれるタイプなんだろうし。
何よりこんなにも面白いと言ってくれるこの人の言葉が嘘だなんて、俺には到底思えそうにない。
「本当に、この脚本でお客さん来てよかったって……思えますかね?」
落ち着いた所でつい、ずっと気にしてた事が口からこぼれる。
この五日間、書いている途中何度も「これは面白いのか?」って不安になる事があった。自分の中じゃ納得は出来ても、いざ他の人が読んだらどう思うのか、稽古を頑張る皆につり合う面白い脚本になってるのか、とか。
(……って、こんな事Aさんに聞いても困るだけだよな)
後で監督にでも聞くか。
考えていると、急に名前を呼ばれた。
どうしたのかと思い顔を上げると、そこには優しく笑うAさんが。
「脚本は確かに良いけど、お客さんに来てよかった、また来たい、絶対来る!って思わせられるかどうか。それはお前達五人次第だよ」
「それってどういうーーー」
聞こうとするよりも先に、バタンと開かれる202号室の扉。
「A変態ネ!」
「大変な」
大慌てて入ってきたシトロンさんと普段通りの至さんに対し、何かを察したらしく顔を青ざめるAさん。
この人本当に苦労してんのな……。
「支配人がカレー鍋をひっくり返しちゃって監督が!!」
「咲也もういい何となく察したから!!」
くわっと口を開き、その先は言う必要ないと言わんばかりに項垂れるAさんに俺も心底同情する。
「ごめんな綴。話の途中だったのに……」
さっきまで楽しそうだった表情から途端に沈んだ顔をするAさんが面白くて、笑ってる内に心が段々と晴れてくのを感じた。
結局最後まで話せなかったけど、それはまたこれからいくらでも出来るしな。
「いや、俺の方こそ付き合って貰っちゃって。なんか自信つきました。ありがとうございます!」
とりあえず、今はしくじった支配人と美味い朝食に感謝するとしよう。
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祐(プロフ) - 時雨さん» お返事が大変遅くなり申し訳ございません。もしよろしければどの話か教えて頂いてもよろしいでしょうか?分かり次第すぐに編集しようと思います┏○ペコ (2018年10月3日 14時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 役不足っていうのは自分には役目が軽過ぎで満足できないなんて言うときに使う言葉ですよ (2018年9月10日 14時) (レス) id: cf954cb7db (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 漣凪さん» ありがとうございます!今は面白いの一言が続ける気力になっております。むしろ妄想して貰えるなんて嬉しさで爆ぜそうです。頑張ります! (2018年3月3日 12時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
漣凪(プロフ) - とても面白かったです!ついつい自身でこの先の展開を妄想してしまいます(←変人)。更新頑張ってください (2018年3月3日 1時) (レス) id: 87e449a00b (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 茜さん» ありがとうございます!文字数制限に毎度ひいひい言っておりますが頑張ります (2018年2月25日 21時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:祐 | 作成日時:2018年2月23日 1時