バイト代行 ページ36
血相を変えて走ってきた綴に、俺達はなんだなんだとそちらに視線を移す。
当の本人はとても慌てていて、今日の日付を確認してすぐさま「マジか……」と重いため息を吐いていた。
「綴?どうした?」
見かねた俺が代表して聞いてみると、やけに沈んだ表情で理由を話し始める綴。
「じ、実は……」
なんでも明日は以前から頼まれていた喫茶店のバイトが入ってるらしく、大学を休んで朝から出るつもりだったらしい。
「脚本の話になる前だったんで、特に考えず二つ返事でOKしちゃって……」
確かに一週間というただでさえ短いスパンの中、バイトと同時で脚本をやるなんて到底無理な話だ。
だが安心しろ綴。
確かに本編じゃ代わる相手がいなかったかも知れないけど、今ここにはなんでも屋のこの俺がいるじゃないか!
え!?なんでも屋とか自分で言ってて虚しくならないのかって!?充分虚しい!!
虚しいけどこれが現実ですから……。超有名舞台俳優速水 Aは幻だったんだよきっと。
「ああ、そんな事か。いいよ?俺出るから」
こういう時本当フリーターって素晴らしいよな。身軽というかなんというか。
自由気ままに生きてる感じが厨二心を擽るぜ。
「え、でも……」
正直お願いしたいんだろうけど、やっぱり申し訳ないのか渋る綴。まぁ俺年上だしな。
……綴より身長低いし筋肉も劣るけども。
まるで新しいおもちゃを買っていいと言われて逆に困ってる子供みたいだ。
「喫茶店なら昔バイトした事あるし、何より明日はまだ未定だったから大丈夫。その代わり脚本頑張れよ?」
喫茶店なら前の世界でもやってたし、ウェイターや執事役なんかは芝居でもよく演じてたからお手の物だ。
「……っす!!」
嬉しそうだなぁ綴。なんか俺まで嬉しくなってくる。
「じゃあ明日は私が腕によりをかけてカレー沢山作りますね!!」
すいませんそれはほんと勘弁して下さい。
* * * *
そして翌日。
店で借りたサロンエプロンを腰に巻き、慣れた手つきで店内を駆け回る。
「お待たせ致しました。こちらがカフェラテと季節のケーキになります」
「はい。かしこまりました」
「え、かっこいい?俺がですか?ありがとうございます」
女性客の多いらしいこの店に俺は運良くハマったらしく、多くのお客さんから声がかかる。
礼儀や言葉遣いとか、昔の経験が無事役に立ったな。
そしてその日は大盛況となり、綴が今後この店のオーナーから俺を呼べとせがまれるようになる事を俺は知らない。
1415人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
祐(プロフ) - 時雨さん» お返事が大変遅くなり申し訳ございません。もしよろしければどの話か教えて頂いてもよろしいでしょうか?分かり次第すぐに編集しようと思います┏○ペコ (2018年10月3日 14時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 役不足っていうのは自分には役目が軽過ぎで満足できないなんて言うときに使う言葉ですよ (2018年9月10日 14時) (レス) id: cf954cb7db (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 漣凪さん» ありがとうございます!今は面白いの一言が続ける気力になっております。むしろ妄想して貰えるなんて嬉しさで爆ぜそうです。頑張ります! (2018年3月3日 12時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
漣凪(プロフ) - とても面白かったです!ついつい自身でこの先の展開を妄想してしまいます(←変人)。更新頑張ってください (2018年3月3日 1時) (レス) id: 87e449a00b (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 茜さん» ありがとうございます!文字数制限に毎度ひいひい言っておりますが頑張ります (2018年2月25日 21時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:祐 | 作成日時:2018年2月23日 1時