いつかきっと ページ20
「良かったです!おめでとうございますAさん!!」
監督さんからOKが出た瞬間、咲也が涙目になりながら俺に抱きついてくる。他にもシトロンや支配人、綴さんから声をかけてもらって、俺の想いはしっかりみんなに伝わったのだということが分かる。
「ありがとう」
そう言いながら咲也の頭を撫でると、より一層の笑顔を俺に向けてくれた。
もちろん俺の今の話は実話ではない。嘘も混ぜたし多少は盛った。けど、あながち嘘でもない。
高校入る直前で両親が死んだのは本当の事だし、それを機に引き取ってくれた知り合いというのは俺の所属していた事務所の社長だ。
他にも面倒を見ていた人というのは同じ事務所の仲間たち(俺も含め寮に暮らしていた)で、息子同然に良くしてくれていたのも本当の事。
俺自身社長の事は本当の父親のように慕っていた。ゲームしても一切怒らないいい人だったんだよ……。
死ぬとさえ分かってれば「親父」の一言でも言えたというのに。
そして俺を突き落としたのはその社長の息子。今頃その件で問い詰められてるだろうな……。
そして舞台から落ち、気づいたら場所も仲間も失っていて、この世界に来ていたと言う訳だ。
多少、というかかなり屁理屈じみてはいるものの、この通り俺の話した事は全て真実でもある。
そりゃ俺だって出来る事なら全てを打ち明け理解して貰いたい。ここの皆なら受け止めてくれるだろうし。
椋や咲也辺りは俺のために泣いてくれそうだな。
けど俺はここで弱音を聞いてほしい訳でも同情してほしい訳でもない。
結構前の世界じゃやる事やったしね。
どうせここに住むことになるなら全力でこいつらの背中を押そうではないか。言った通りやれることは何だってやるつもりだ。
一週間カレーにだけは絶対させんぞ。
それからはどんどんと話が進み、なんでも衣類は綴が貸してくれるらしく、歯ブラシなどの日常品は寮内に予備があるらしいとの事で落ち着いた。
「何から何まで本当にすみません……」
俺の謝罪にも「気にしないで」と言ってくれる監督さん。そんなん惚れるわ……。
それから咲也に「普段通り話してほしい」と言われた為、皆には普通に接することにさせてもらった。
(本当に皆いい人だな……)
さっきからそればかりが出てくる。
いつかちゃんと自分の口で、俺の生きてきた前の世界の事を言えたらいいな。
というか絶対言う。
でもその前に。
「そろそろ部屋を見てもいいかな」
この人とちゃんと話をしないと。
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祐(プロフ) - 時雨さん» お返事が大変遅くなり申し訳ございません。もしよろしければどの話か教えて頂いてもよろしいでしょうか?分かり次第すぐに編集しようと思います┏○ペコ (2018年10月3日 14時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 役不足っていうのは自分には役目が軽過ぎで満足できないなんて言うときに使う言葉ですよ (2018年9月10日 14時) (レス) id: cf954cb7db (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 漣凪さん» ありがとうございます!今は面白いの一言が続ける気力になっております。むしろ妄想して貰えるなんて嬉しさで爆ぜそうです。頑張ります! (2018年3月3日 12時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
漣凪(プロフ) - とても面白かったです!ついつい自身でこの先の展開を妄想してしまいます(←変人)。更新頑張ってください (2018年3月3日 1時) (レス) id: 87e449a00b (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 茜さん» ありがとうございます!文字数制限に毎度ひいひい言っておりますが頑張ります (2018年2月25日 21時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:祐 | 作成日時:2018年2月23日 1時