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景勝「なら、いっそ前庭を、もっと広くとる?」
「北向き玄関で南北に長い町屋なので、あまり日当たりが良くないんですよね…」
景勝「なるほど。じゃあ、居間と食事室は、まとめて、空いたここに庭を…」
兼続「おいお前ら。まだやらなきゃならねー事、あるんじゃねーのか」
「か、兼続様…!」
景勝「びっくりした。なんで、ここってわかったの」
兼続「自室にも稽古場にもいねーし、最近お前が行くところって言ったら、ここしかなかったんだよ。」
襖が半開きのままだった為、そこから除くようにして兼続が立っている。なんとなく機嫌が悪いように見えるのはきっと気のせいではない。
「申し訳ございません。私が景勝様にお願いしてお引き止めしていたんです。すぐ仕事に戻ります。」
二人に一礼して早足に廊下を歩いていく。それを目で追いかける両の目に、兼続はため息を漏らす。
兼続「…お前、まさかとは思ってたけど、ホントにあんなのがいいのか?」
景勝「…なんのこと」
兼続「見すぎだっての。俺でも分かったんだから、景持さんも気づいてんじゃねーか?」
景勝「えっ、まさか兼続、言って回ったり、してない、よね?」
兼続「してねー。ってかしねーよ。あの女がお前に相応しいかどうかだけ言えば、まあ女中ってだけで駄目だろうけどな。」
景勝「……。」
じとりと重い目で兼続を半睨みする。横目で反応を伺った兼続は、真面目な顔つきになり、景勝の方に手を乗せる
兼続「俺は賛成も反対もしねえ。けどな、自分の立場と相手の立場。これだけは見失うんじゃねーぞ。苦しむことになるのは、結果どうなろうとお互い様なんだからな。」
『次期総大将』と『城に仕える女中』。総大将が変更になることが滅多にないのなら、幾らでも替えの効く女中が切られることは明確だ。
彼女がどう思っているかはわからない。聞こうにも、そこまでする勇気はない。
そして、出た答えが。
景勝「……郷里にいる家族のために、働いている彼女に、負担はかけられない。」
声に出すと、なにかが胸にストンと落ちてきた。
モヤモヤした感情が、頬を伝ってすうっと流れ出た。
景勝「…言わないで。絶対。」
兼続「…おう。」
景勝「これは、僕だけの。僕だけ、で、いい…」
忘れなくていい。落ち着かせるだけでいい。
今まで通り仲良く出来るなら。今はそれで満足だ。
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ねむいたぴおかは僕“ねむたぴ“(プロフ) - わ、私がまだ小説を書いてない時に見た憧れの小説だ…!めっちゃ面白いです!是非是非続編でも頑張ってください!! (2018年7月27日 7時) (レス) id: 9d49224d89 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん - 夜月ライ→みなみさん» 夜月さん!今続編の方で【オリジナルフラグをはずしてください】というのありましたよ!早くはずさないと違法報告(?)されてしまいますよ!? (2018年7月25日 12時) (レス) id: caab18a589 (このIDを非表示/違反報告)
夜月ライ→みなみ(プロフ) - 総合時間事業会社代表取締役社長専属秘書さん» 返信遅くなりました、すみません。コメントありがとうございます!!応援ありがとうございます!この作品や、ゲームを通じてもっと作品が増えることを私も期待してます!続編行きましたので、そちらにもお付き合い頂きたいです! (2018年7月25日 10時) (レス) id: 7df48d7d67 (このIDを非表示/違反報告)
夜月ライ→みなみ(プロフ) - 名無しさんさん» 返信遅くなりました、すみません。コメントありがとうございます!!続編行きましたので、そちらの方もお願いします!! (2018年7月25日 10時) (レス) id: 7df48d7d67 (このIDを非表示/違反報告)
夜月ライ→みなみ(プロフ) - 。さん» コメント返信遅くなりました、すみません。リクエストありがとうございます!!続編の方で優先して書かせていただきます。更新をお待ちください (2018年7月25日 10時) (レス) id: 7df48d7d67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜月 来-ヤヅキ ライ- | 作成日時:2018年1月1日 20時