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私はお会計をしようとしたら、マサイさんに止められた。
お言葉に甘えてご馳走になった。
A「ごちそうさまでした。とても美味しかったです。」
マサイ「気に入ってもらえたみたいでよかった。また来よう!今日は家まで送るよ。」
帰り道。私たちの間に会話は無い。
でもマサイさんの隣に立って歩いていることがとても心地いい。
時々歩くスピードが速くないかマサイさんは私の方を確認してくれる。
その度に優しく微笑んでくれるところ、マサイさんの優しさが目に見える。
帰りはあっという間に家に着いてしまった。
今日私は確信した。マサイさんが好き。
でも、これは心の中にしまっておく。
苦しいけど迷惑をかけることになる。
自分の中で終わりにする。
私の顔が少し曇ったのだろう。
マサイさんが心配そうにしていた。
A「今日はありがとうございました。とても美味しかったし、楽しかったです。」
マサイ「こちらこそありがとう。楽しかった。じゃあ、また。おやすみ。」
A「おやすみなさい。」
マサイさんは帰って行った。
部屋に入り我慢していた蓋が開くように私は泣いた。
とても楽しかった。今まで感じたことのない幸福感。
すぐにでもマサイさんに会いたい。でも、会えない。
これ以上私なんかが近くにいても迷惑になるだけだ。
なんで私は耳が聞こえないの?
普通の人と同じことができないの?
学校生活、仕事、恋愛何一つ普通の人と同じことはできない。
どこにいても周りの目を気にしながら生活をする。
街を歩いていても、車や自転車などの音は聞こえないからキョロキョロしながら歩かなければいけない。
周りから見たら見た目は他の人と何も変わらない。
だから辛い。
耳が聞こえないと知った時、対等には扱ってもらえない。
どうして…どうして…どうして生まれて来たの…。
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作者名:yui | 作成日時:2020年7月27日 19時