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『オツカレ』
ミルクティーのラベルの部分に、そう書かれていた。
なぜ、湊は僕が窓拭きをしているのを知っていたのか気になるけど、今は、問いかける気分じゃない。
素直に、言葉とともにミルクティーを受け取っておく。
「ありがと。」
湊に笑いかければ、照れ臭そうにそっぽを向く。
なんだ、こいつ……案外、可愛いとこあるんだな。
いつもは無表情の湊の頰が、僅かに赤くなっているのを見て、僕はそう思った。
その時だった。
強制収容所内に、けたたましいサイレンが鳴ったのは。
このサイレンは、収容所から脱走を試みた、美男たちが窓枠に張られたセンサーに、足が触れた時に鳴る。
手が触れる分には、何も問題はないが、足が触れると脱走とみなされ、警報が鳴ってしまう仕組みとなっている。
湊は、ポケットに入れていた携帯を取り出し、すぐさま狼に連絡した。
「狼、すぐに窓を閉めろ。」
「もうやっている。安心しろ。」
さすが、狼だ。仕事が早い。
僕は、こんなところでのんびりと脱走者が捕まって帰ってくるのを待っているわけには、いかないので、庭から塀の外へ飛び出す。
「湊!
「分かってる。」
焦りが高ぶる状況でも、湊は常に冷静に次にすべきことを頭と体で理解している。
相変わらずだな、と思うと自然と頰が緩んでしまう。
僕は心情を誤魔化すように、インカムを取り出し、装着する。
民家の屋根を渡りながら、インカムにそっと話しかける。
「湊、脱走者の名前と大まかな詳細を教えてくれ。」
そう言うなり、インカムの向こうでパソコンのキーボードを叩く音が聞こえた。
手慣れた作業なのか、情報はすぐに引っ張り出せた。
「
そりゃあ、脱走も楽かもなぁ。
「ああ、大丈夫だ。ありがとな。」
そう言って僕は、再び2人を探すために町中を駆け回る。
人間の足じゃ、そう遠くにはいけない。
確信した僕は、路地や狭い通路、隠れやすそうな場所を隈なく探す。
逃げられないなら、隠れる。
人間の本能は、きっとそう行くはずだ。
足を止め、耳をすませてみる。
もしかしたら、聞こえるはずだ。
荒い息遣いと、2人の走る足音が……。
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枯羽(プロフ) - ゆきさん» 良かったです!続編に行ったのでぜひ読んで見てください。リクエスト下さってありがとうございました!ゆきさんのおかげで、楽しく番外編を書くことができました。 (2018年3月19日 0時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 楽しめました!ありがとうございます笑更新楽しみに待ってます!リクエストに答えていただいて本当にありがとう (2018年3月18日 22時) (レス) id: 2de872441c (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - ゆきさん» ど、どうだったでしょうか?恋愛系は、難しかったです…。うまく書けていないかもですが、楽しんでいただけたら、何よりです。 (2018年3月18日 22時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
一応歌い手の、みにまーむ(プロフ) - 枯羽さん» そうなんですね!楽しみにしています! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 69f1870dfa (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - 一応歌い手の、みにまーむさん» その謎は、続編にて解き明かそうと思います! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
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