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「お前さ、礼儀って言葉知ってる?」

村正にそう言われ、僕は口を噤んだ。落ち着けば、命の恩人だという人に、僕はかなり失礼な態度を取ったような気がする。

「…ごめんなさい。」

急に申し訳なささが湧き上がり、怒っているであろう村正に謝った。
すると、村正は、怒るとか呆れる以前に、僕に興味なさそうな視線を向けていた。

その視線と目が合い、なんだか場違いな場所にいるような感じがした。

すごく落ち着かない気分になって、思わず、ソワソワしてしまった。

「…一応、説明はしてやるよ。」

ソワソワし始めた僕を見て、村正も落ち着かないのか、いきなりそう言い始めた。

「え、あっ、いえ!だ、大丈夫、ですっ!助けていただき、ありがとうございましたっ!!」

我に返ったように現実を理解し、僕は一気に緊張してしまい、真っ白な頭で何も考えず口走っていた。

あたふたする僕を呆気にとられるように見た村正は、不意に吹き出し、笑い出した。

「ははっ。お前って面白いのな。なんも大丈夫じゃないくせに、強がって。」

さっきの態度から一変したように、口調が和らぎ、村正に怯えていた僕の頭を優しく撫でた。

初対面で、触れられるのは、怖かったはずなのに、村正に撫でられるのは、嫌いじゃなかった。

「村正の手……あったかい…。」

言いながら僕は、村正の手に自分の頰を擦り寄せた。自分でも驚くくらい大胆な行動だった。
村正も、僕のこの行動には予想外だったらしく、驚いていたが、すぐに優しい笑みを浮かべた。

「お前、意外と甘えん坊なのか?」

どことなく嬉しそうな表情の村正。

「そーかも……。」

先ほどまでの凍りつくような空気は、今はどこにもなかった。
ほのぼのとした空気に包まれ、しばらくの間は、お互い何も言わなかった。

「…んで、お前、名前は?」

パイプ椅子から立ち上がり、窓辺に寄りかかると村正は、徐に口を開き、僕に問いかけた。

「A。」

口を開いた瞬間、スルッと自分の名前が出てきた。初対面のはずなのに、妙に警戒心を感じなかった。

「そう、か。Aか……。」

村正は、歯切れ悪くそう言い、僕の名前を確かめるように呟いた。
その村正の行動に、違和感を覚えた。

初対面の人で、僕の名前を復唱した人は、僕に名前をくれたあの人しかいない。

その確信が、僕の中にあった。

二人目だと喜ぶべきなのだろうけど、僕は喜べなかった。理由なんて、分からない。

村正には、初めて会った気がしない。

Another Story #狼編→←CODE:39



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枯羽(プロフ) - ゆきさん» 良かったです!続編に行ったのでぜひ読んで見てください。リクエスト下さってありがとうございました!ゆきさんのおかげで、楽しく番外編を書くことができました。 (2018年3月19日 0時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 楽しめました!ありがとうございます笑更新楽しみに待ってます!リクエストに答えていただいて本当にありがとう (2018年3月18日 22時) (レス) id: 2de872441c (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - ゆきさん» ど、どうだったでしょうか?恋愛系は、難しかったです…。うまく書けていないかもですが、楽しんでいただけたら、何よりです。 (2018年3月18日 22時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
一応歌い手の、みにまーむ(プロフ) - 枯羽さん» そうなんですね!楽しみにしています! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 69f1870dfa (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - 一応歌い手の、みにまーむさん» その謎は、続編にて解き明かそうと思います! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:枯羽 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年2月12日 14時

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