CODE:37 ページ39
視線を向けて見れば、そこには悔しそうな顔で佇む夜巳がいた。
夜巳が先ほど、僕に手を貸した際に言った言葉は、僕の後をつけるための口実のようなものだと、今になって気づいた。
僕のお礼を遮ってまで言った言葉は、僕の警戒心を解くためだったってわけだ。
悔しいが、僕はまんまとそれに引っかかった。
夜巳は、いい奴なんかじゃなく、ただの策士家なんだ。
夜巳に対して警戒心を解いている僕なら、夜巳の行動を注意して観察したりはしない。湊は、それを分かりきった上で、あんな賭けを狼としたのだろう。
これは、全面的に僕が悪いな。気づかぬうちに狼を巻き込んでる。
「狼…碧と弥生が心配だから、先に行っててくれないか?湊とは、ちゃんと話しするから。」
僕がそう言うと狼は、困惑したような表情になった。
自惚れかもしれないが、狼は、僕を心配してくれているのだろう。
でも、今の僕には、その気持ちだけで十分だった。
「大丈夫だから。」
僕の紡いだ言葉に背を押されるように狼は、躊躇った後、走り出して僕らの前から姿を消した。
「何故、突き放すようなことを言った?」
狼の姿が見えなくなるまで見送った湊は、そう口を開いた。
僕は自分の言葉に嘘をつかず、ありのままをゆっくりと話した。
「僕は、狼を巻き込んでる。それに気づいただけ。それに、湊は、僕を殺すつもりは無いんでしょう。」
「本当に、そう思っているのか?」
湊の言葉に僕は、否定も肯定もしなかった。
「あくまで、湊はって話だけど…。」
言いながら湊の隣に立ちながら、僕に鋭く視線を向けてくる夜巳に視線を向けた。
「分かってんじゃん。君って意外と賢いのかもね。」
何があっても僕を見る表情は、変わらない。
僕は、一体何故、夜巳に対しての警戒心を解いてしまったのだろうか。
その疑問が、心の
「そりゃ、どーも。」
棒読みになりながらも、そう言って改めて視線を湊に戻した。
しかし、湊は声を出さずに口パクで僕に何かを伝えた。
見逃さないようにと、じっと湊の口の動きを観察した。
よ、み、は、さ、つ、じ、ん、き。
そう読み取れた瞬間、ハッとなって僕に向かってくる人影を咄嗟の判断で避けた。
湊の言葉を一瞬だけ疑った僕を殴りたい。
声に出さずとも、夜巳からは、はっきり伝わる殺意で満ち溢れていた。
こんな分かりやすいことに気づかなかった僕も、随分と落ちぶれたな。
心の中でそう呟いた。
150人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「女主」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
枯羽(プロフ) - ゆきさん» 良かったです!続編に行ったのでぜひ読んで見てください。リクエスト下さってありがとうございました!ゆきさんのおかげで、楽しく番外編を書くことができました。 (2018年3月19日 0時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 楽しめました!ありがとうございます笑更新楽しみに待ってます!リクエストに答えていただいて本当にありがとう (2018年3月18日 22時) (レス) id: 2de872441c (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - ゆきさん» ど、どうだったでしょうか?恋愛系は、難しかったです…。うまく書けていないかもですが、楽しんでいただけたら、何よりです。 (2018年3月18日 22時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
一応歌い手の、みにまーむ(プロフ) - 枯羽さん» そうなんですね!楽しみにしています! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 69f1870dfa (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - 一応歌い手の、みにまーむさん» その謎は、続編にて解き明かそうと思います! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ