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視線を向けて見れば、そこには悔しそうな顔で佇む夜巳がいた。

夜巳が先ほど、僕に手を貸した際に言った言葉は、僕の後をつけるための口実のようなものだと、今になって気づいた。

僕のお礼を遮ってまで言った言葉は、僕の警戒心を解くためだったってわけだ。

悔しいが、僕はまんまとそれに引っかかった。

夜巳は、いい奴なんかじゃなく、ただの策士家なんだ。

夜巳に対して警戒心を解いている僕なら、夜巳の行動を注意して観察したりはしない。湊は、それを分かりきった上で、あんな賭けを狼としたのだろう。

これは、全面的に僕が悪いな。気づかぬうちに狼を巻き込んでる。

「狼…碧と弥生が心配だから、先に行っててくれないか?湊とは、ちゃんと話しするから。」

僕がそう言うと狼は、困惑したような表情になった。

自惚れかもしれないが、狼は、僕を心配してくれているのだろう。
でも、今の僕には、その気持ちだけで十分だった。

「大丈夫だから。」

僕の紡いだ言葉に背を押されるように狼は、躊躇った後、走り出して僕らの前から姿を消した。

「何故、突き放すようなことを言った?」

狼の姿が見えなくなるまで見送った湊は、そう口を開いた。

僕は自分の言葉に嘘をつかず、ありのままをゆっくりと話した。

「僕は、狼を巻き込んでる。それに気づいただけ。それに、湊は、僕を殺すつもりは無いんでしょう。」

「本当に、そう思っているのか?」

湊の言葉に僕は、否定も肯定もしなかった。

「あくまで、湊はって話だけど…。」

言いながら湊の隣に立ちながら、僕に鋭く視線を向けてくる夜巳に視線を向けた。

「分かってんじゃん。君って意外と賢いのかもね。」

何があっても僕を見る表情は、変わらない。

僕は、一体何故、夜巳に対しての警戒心を解いてしまったのだろうか。

その疑問が、心の(もや)として霧がかって晴れない。

「そりゃ、どーも。」

棒読みになりながらも、そう言って改めて視線を湊に戻した。

しかし、湊は声を出さずに口パクで僕に何かを伝えた。
見逃さないようにと、じっと湊の口の動きを観察した。

よ、み、は、さ、つ、じ、ん、き。

そう読み取れた瞬間、ハッとなって僕に向かってくる人影を咄嗟の判断で避けた。

湊の言葉を一瞬だけ疑った僕を殴りたい。

声に出さずとも、夜巳からは、はっきり伝わる殺意で満ち溢れていた。

こんな分かりやすいことに気づかなかった僕も、随分と落ちぶれたな。

心の中でそう呟いた。

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枯羽(プロフ) - ゆきさん» 良かったです!続編に行ったのでぜひ読んで見てください。リクエスト下さってありがとうございました!ゆきさんのおかげで、楽しく番外編を書くことができました。 (2018年3月19日 0時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 楽しめました!ありがとうございます笑更新楽しみに待ってます!リクエストに答えていただいて本当にありがとう (2018年3月18日 22時) (レス) id: 2de872441c (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - ゆきさん» ど、どうだったでしょうか?恋愛系は、難しかったです…。うまく書けていないかもですが、楽しんでいただけたら、何よりです。 (2018年3月18日 22時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
一応歌い手の、みにまーむ(プロフ) - 枯羽さん» そうなんですね!楽しみにしています! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 69f1870dfa (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - 一応歌い手の、みにまーむさん» その謎は、続編にて解き明かそうと思います! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:枯羽 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年2月12日 14時

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