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「人を褒めるときぐらい、あってもいいだろ。」
碧の僕に対する失礼な態度に、不満を持った僕は、頰を膨らませて拗ねてみた。
「…悪かった。だから、拗ねんな。」
碧は意外にも、こういう僕の態度には不慣れだ。外回りだったせいもあって、僕と関われた時間は、僅かだった。
狼や湊が、僕にあんな態度を取るのは、慣れ過ぎたせいだ。
「んで、これからどうするんだ?」
そう言って立ち上がろうとした瞬間、身体中の力が抜けたように、再び地面に座り込んでしまった。
碧に手刀された首裏から、全身に伝わるように痺れが走っている感覚だ。
「とりあえず、Aは、ここにいろ。」
「はい?えっ、お前は…?」
てっきり僕は、ここで拷問されるのかと思っていた。そうでないと、碧のやっていたことが演技だとバレてしまう。
なんせ、僕の体のは傷ひとつついていないのだから。
「説得してくる。」
説得って…あの天皓を……?
反論の声も疑問の声も出なかった僕を、無視して碧は、この部屋を出て行った。
改めて、真っ暗な空間に独りという感覚に、慣れなさ過ぎて、妙に落ち着かない気分だ。
それでも、今は、碧の心配が胸に募る。
碧は、優秀な奴だ。物覚えも良い、素直で忠実、そんでもって真面目、だけれど、意外にも心は繊細。
碧は、そのほかにも、厄介な性格を抱えている。
説得の際に、あの
黙ってここで待ってろって言われたって、納得できるはずがない。
「行くしかないだろ。」
決意を言葉に表し、碧の指示を無視して、拷問部屋の扉を開け、会長室へと向かった。
ここの構図は、昔と変わっていない。なら、行き慣れた僕なら、すぐに場所はわかる。
相変わらず、長い廊下を走り、厄介な事態になる前に、碧を止める。
少し弾んだ息を感じながら、ようやくピッタリ閉じられた大きな扉の前まで来た。
息を整え、少し中の様子を伺うと、言い争う声が聞こえた。
礼儀なんて守ってられないくらい切羽詰まった僕は、強引に扉を開けた。
すると、泣き崩れた碧に、手を伸ばす天皓がいた。
僕は一瞬で、状況を把握し、急いで碧の元へ駆け寄った。
「碧ッ!」
名前を叫んでやれば、たくさんの涙を含んだ目で僕を見て、さらに泣き出した。
その状況を楽しむかのように、口の端を上げて薄く笑う天皓。
なんだか、妙に腹が立つ。
一発殴っておくべきだったか、と思い立ち上がり、拳を固く握った。
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枯羽(プロフ) - ゆきさん» 良かったです!続編に行ったのでぜひ読んで見てください。リクエスト下さってありがとうございました!ゆきさんのおかげで、楽しく番外編を書くことができました。 (2018年3月19日 0時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 楽しめました!ありがとうございます笑更新楽しみに待ってます!リクエストに答えていただいて本当にありがとう (2018年3月18日 22時) (レス) id: 2de872441c (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - ゆきさん» ど、どうだったでしょうか?恋愛系は、難しかったです…。うまく書けていないかもですが、楽しんでいただけたら、何よりです。 (2018年3月18日 22時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
一応歌い手の、みにまーむ(プロフ) - 枯羽さん» そうなんですね!楽しみにしています! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 69f1870dfa (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - 一応歌い手の、みにまーむさん» その謎は、続編にて解き明かそうと思います! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
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