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何分、いや、何時間経ったかわからない。

僕は、真っ暗な監獄のような場所で、目を覚ました。辺り一面、真っ黒悩みで覆われているように暗い。

薄っすら開けた視界に、誰かの靴先が見えた。
頭をゆっくり上げて、僕の目の前に立つ人物の顔を伺った。

「A…。」

僕の名前を呼ぶ、優しげな声。

「……碧、か?」

なんとなくそう思い、見上げると視界に碧の姿を捉えた。
先ほどまでの冷たさの滲むような瞳ではなく、罪悪感を感じているような瞳だった。

「ごめんなさいっ。」

碧は、僕が目を覚ましたことが分かった瞬間、勢いよく頭を下げて謝ってきた。
僕はなんのことか分からず、頭に疑問符を浮かび上がらせるばかりだった。

「な、なんのことだ、碧。」

急に態度の変わった碧に、驚きながらも、そう聞いてみると、碧は、僕から視線を外し、地面を見るように目を伏せて話し始めた。

「俺さ、実は、天皓に操られてなんかいなかったんだ。…あいつが、俺のこと優秀な駒として使う間だけ、演技で貫こうと思った。でも、あいつ、執着心が強いのか、俺を手放す気は1ミリもないって分かったんだ。」

僕は、未だに自分の目の前に立っている碧が、さっきまで演技していたとは思えなかった。

「じゃあ、なんで僕に嘘ついたんだ?」

碧と2人きりになった時間はたくさんあった。けれど、碧は一瞬でも、演技だと思わせる行動はしなかった。塁という人物に溶け込んでいたような気がする。

「この収容所では、監視カメラが常に作動している。この部屋を除いてだけどね。」

碧の口ぶりからして、ここは拷問部屋か何かだろう。
人が、痛めつけられているところを見たって、いい気分になるやつは、変人くらいしかいないだろ。

「なるほど…。僕をこの部屋に連れ込むために、わざと演技してたってわけか。」

「まぁ、な。」

納得したように僕が言うと、碧は、歯切れ悪く答えた。

「にしても、お前って、演技できるやつだったか?」

「A、俺は、元外回りの監視役だったんだ。市民に溶け込むために演技くらいは、身につけている。」

「ふーん。さすがだな。」

感心したように僕が呟けば、碧は、褒められて照れくさかったのか、何故かそっぽを向いた。

「…Aが、人を褒めることってあるんだな。」

薄っすら頰を赤く染めたまま、碧がそう言った。

こいつ、なかなか、失礼なやつだな。

「あのなぁ、僕だって人間だ。」

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枯羽(プロフ) - ゆきさん» 良かったです!続編に行ったのでぜひ読んで見てください。リクエスト下さってありがとうございました!ゆきさんのおかげで、楽しく番外編を書くことができました。 (2018年3月19日 0時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 楽しめました!ありがとうございます笑更新楽しみに待ってます!リクエストに答えていただいて本当にありがとう (2018年3月18日 22時) (レス) id: 2de872441c (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - ゆきさん» ど、どうだったでしょうか?恋愛系は、難しかったです…。うまく書けていないかもですが、楽しんでいただけたら、何よりです。 (2018年3月18日 22時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
一応歌い手の、みにまーむ(プロフ) - 枯羽さん» そうなんですね!楽しみにしています! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 69f1870dfa (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - 一応歌い手の、みにまーむさん» その謎は、続編にて解き明かそうと思います! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:枯羽 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年2月12日 14時

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