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拾われたなんて言っても、この収容所ができた時の話だ。会長とは、幼い頃からの付き合いではない。
だからこそ、逆らえるなんて選択肢は、もともと僕には存在していない。
雇われの身としても、会長の義理の娘だとしても、逆らえる術は、どこにもない。
「了解……。」
大人しく従うしか、選択肢はない。
辛い現実だと分かっていても、逆らえない自分を酷く恨む。
「それで、湊は今、どこに?」
僕がそう問いかけた瞬間、背後で荒々しく、扉が開く音がした。
息を切らし入ってきたのは、いつも落ち着いた表情をしていた狼だった。今は、珍しく焦っているようだ。
「会長、A!湊が……っ。」
「湊」という単語に僕は、動揺を誘われた。胸騒ぎが治らないのは、きっと、狼の言葉の続きを受け入れられないからだろう。
「脱走しましたッ…!!」
信じたくなかった事実、裏切られた自分の心を虚しく思う。
目の前が真っ暗になるって、こういうことを言うのか、と呑気に思うくらい、今の僕は放心状態だ。
「おいっ、A!すぐに追え!」
狼に肩を掴まれ、我に返る。気持ちの整理も、頭での理解も追いつかないまま、僕は、湊を追いかけるため飛び出した。
インカムから、狼の指示を聞き、隈なく探すが、湊もそこまで馬鹿じゃない。
きっと、うまい隠れ方をしている。簡単に見つからず、僕にも予測不可能な場所。
碧と弥生も、一緒になって、湊を探し回る。
見つかるはずないと分かっていても、心のどこかで、まだ間に合うと期待する僕がいる。
ほんと、どこまで僕は、湊に執着しているんだろう。
笑えるくらいくだらない自分の心に、いい加減、嫌気がさしてくる。
「狼、今、僕が向かっている方向の真反対には、何がある?」
インカムの向こうで、タイピングの音がする。
「…孤児院、だな。」
「了解、ありがと。あとは、任せてくれ。」
そう言うなり僕は、インカムを外し、捨てるとすぐさま踏み潰した。
ここからは、僕ひとりの戦いになってくる。
狼に頼ってばかりじゃ、多分、僕は、湊を捕まえることは無理だ。
懐に忍ばせた拳銃を手に持ち、警戒しながら、孤児院に向かって、歩き出す。
途中の道から完全に人気がなくなり、だんだんと道が入り組んできた。
迷わないように、短刀で印をつけながら、歩いて行く。
しばらく歩いていると、目の前に病院のような施設が目に入った。
突撃を試みた瞬間、街の方から、住人の叫び声やら、悲鳴、爆発音まで聞こえた。
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枯羽(プロフ) - ゆきさん» 良かったです!続編に行ったのでぜひ読んで見てください。リクエスト下さってありがとうございました!ゆきさんのおかげで、楽しく番外編を書くことができました。 (2018年3月19日 0時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 楽しめました!ありがとうございます笑更新楽しみに待ってます!リクエストに答えていただいて本当にありがとう (2018年3月18日 22時) (レス) id: 2de872441c (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - ゆきさん» ど、どうだったでしょうか?恋愛系は、難しかったです…。うまく書けていないかもですが、楽しんでいただけたら、何よりです。 (2018年3月18日 22時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
一応歌い手の、みにまーむ(プロフ) - 枯羽さん» そうなんですね!楽しみにしています! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 69f1870dfa (このIDを非表示/違反報告)
枯羽(プロフ) - 一応歌い手の、みにまーむさん» その謎は、続編にて解き明かそうと思います! (2018年3月17日 16時) (レス) id: 4774db47d0 (このIDを非表示/違反報告)
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