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『あ、ちょっと待ってて？』
そう言うと
あっちの方へ走っていった。
しばらくすると
『はい、どーぞ？』
手のひらにあったかいココアが渡された。
「へ、？」
『あ、ごめん、甘いもん得意やなかった？』
「え、あ、いやいや！
全然！むしろ好きです、」
『あ、ほんま？ならよかった、飲んで？』
「ありがとうございます」
『ふふ、いーえ。』
ふたり肩を並べてココアを飲む。
思い返すと、彼はいつもここで歌ってるけど
お金をもらっているのを見たことがない。
普通、こういうのってお金もらうためにちょっとした入れ物とか置いとくものなんじゃないの？
どこを見渡してもそんなものはなかった。
何のためにここで歌ってるんだろう。
「趣味、なんですか？
歌うの。」
『趣味、まぁせやねぇ。
俺な、バンド組んでんねん。』
「え、そうなんですか？」
『そ。やから、ほんまにギター弾いて歌うのが仕事。』
「へぇ、」
『でも、仕事だからやってるわけやなくて、普通に弾いて歌うのが好きやから、水曜日、この時間に個人的にやってんねん。』
「そうだったんだ、
あ、だからお金…」
『あ、気づいた？
そう、別にお金がもらいたいわけやない。
ほんまにただの趣味。』
バンドも組んでるのに
個人的にこういうことしちゃうまで
歌うのが好きなんだろうな。
きっと自分がやってる仕事を誇りに思ってるんだろうな。
そう考えたらなんだかとっても羨ましくなった。
だって、彼は自分のやりたいことを仕事にしてる、
強制された仕事じゃないんだ。
あたしも彼のようになりたい。
まぁ、
そんなこと、思うだけ無駄なんだろうけど。
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作者名：ふぅりん | 作成日時：2018年2月2日 20時
