自由（青） (ページ3)

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「あ、もう時間だ」

今は6時15分。

あの人の歌は大体6時半に始まる。

仕事はまだ少しだけ残ってるけど

彼の歌がどうしても聞きたいから

この仕事は明日にまわそう。

会社の人に挨拶だけして

足早に会社を出た。

会社から駅までは10分から15分はかかる。

間に合うかな、

いつもより急いでその場所に向かった。

「はぁ…間に合った、」

駅前いつもの場所に行くと

彼はまだ準備の途中だった。

「あ、」

彼と目が合って

柔らかく微笑んだあと

『聞いてください、』

そう言ってあたしが一番大好きな歌を歌い始めた。

すごく、透き通った声で

その歌声に吸い込まれていった。

周りはざわざわしてたけど

そんなのも関係なく

あたしは彼しか見れなかった。

気が付けば歌が終わっていた、そんな感じ。

感動でしばらくその場から動けなくて

いわゆる放心状態、みたいな。

『あのぉ…』

いきなり聞こえた声にはっと我に返ると

今まで歌っていた彼が

あたしの目の前にいた。