自由（青） (ページ15)

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『Aちゃ～ん？』

「え、あ、はいっ」

『もー、曲終わったでー？』

「え、あ、えっと」

安田さんの歌は、いつもいつも引き込まれて

毎回いつ終わったか分からなくなるの。

『ふは、おもろいなぁ。
ほんまAちゃんって毎回ちゃんと聞いてくれるから嬉しいわぁ』

「いや、安田さんが凄いだけですよ」

『ありがとぉなぁ。…って、また安田さん呼びになってるで！』

「へ、あー…」

無理だよ、ヤスくんなんて…

あたしが下向いて黙ってたら

「しょーちゃん!!」

後から可愛らしい女の子の声がした。

後ろを見れば、それはそれは声に合った

可愛らしいお顔が見えた。

前を見ると安田さんは

『あー！里奈～来たん？』

その、里奈さん？

に手を振ってにこにこしてた。

彼女さん？

「うん、来ちゃった!!」

『こんな時間に危ないやん～、』

「だって、なかなか帰ってこなかったから」

同棲、してるんだ…

なんでだろ、苦しい。

『あ、Aちゃん、また来週な？』

「あ、はい…」

最後はまともに安田さんの顔見れなくて

俯いたままになっちゃった。

二人の後ろ姿、すっごくお似合い。

あー、なんでだろ。

泣けてきちゃった。

なんだ、なんで気づかなかったんだろ。

好きなんじゃん、安田さんのことが。

ずっとずっと、歌が好きだなんて言ってきたけど

結局、ほんとに好きだったのは安田さん自身だった。

今更、…

気づいたって遅いよ。

彼女いるのにさ。

馬鹿だなぁ。あたし。