ハル。【三途春千夜】 (ページ27)

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ハル。ページ27

目を開ると視界に入ってきた光に反射的に目を細め瞼に手をかざす。

焦点の合わない視界。

気だるい体。

静かな空間。

静かな空間ってやっぱり苦手だなぁと他人事のように考える。

ふと視界の左側に入る色素の薄いの後頭部。

誰の頭かなんて言わずとも分かる。

そんな彼の頭をありがとうの意味を込めて優しく頭を撫でる。

｢ん？あー、起きたんだな。
飯食えるか？
今ならいい感じに冷めてると思うけど｣

振り返り、あたしを調子を伺うハル。

あたしが起きるまでの間はベッドを背もたれに座ったままケータイを扱っていた様だった。

｢うん。食べる。ありがとう｣

食欲はあまり無かったが、食べらないと直らないしハルにも迷惑をかけると思って食べた。

何年かぶりの人に作ってもらったご飯はとても温かくて自分で作って食べるよりも美味しく感じた。

ご飯を食べた後は薬を飲み、ハルに無理やり横にさせられた。

やっぱり妹がいただけあって面倒見がいい所は昔と変わらないみたい。

少しだけ昔が懐かしくなってまた寂しくなった。

先程と同じ様にベッドを背もたれに座ってテレビを見ているハルの髪の毛の束を優しくすくい上げる。

突然触ったのはびっくりしたみたいで肩をビクリと震わせていた。

その拍子にすくい上げた髪の毛も手からこぼれ落ちる。

驚いたことが恥ずかしいのか顔を少し赤らめたままこちらを振り向き睨んでいたが、全く怖くない。

｢んふっ｣

ハルは結構ビビりさんなんだね。

｢……ンだよ｣

ジト目でこちらを見るハルに笑いが零れそうになったがそれをぎりぎり耐える。

嘘。ちょっとだけニヤついちゃった。

｢んーん｣

ハルの目にかかっている前髪を耳にかけ、顔の輪郭に沿ってそのまま頬を撫でる。

｢髪、伸びたね｣

昔の短髪のハルもそれはそれで似合っててかっこよかったけど、髪が伸びて綺麗になったな。

ハルは照れて視線を逸らす。

｢……まあな｣

｢伸ばしてるの？｣

｢いや別に伸ばしてる訳でもねーけど。
切るのめんどくて切りに行かなかったらここまで伸びた｣

こーゆー所でめんどくさがり屋な所が出るのがなんととハルらしい。