天の色 (ページ4)

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さんページ4

愛しい思い出に浸っている内に万次郎達は迎えに来てくれた。

今日はチャリなんだ。

｢ごめん待った？｣

そう言った万次郎の手には食べかけのどら焼きが握られており、
自転車の籠には小さな紙袋とどら焼きが入ってあった。

ほのかに香る生地の焼けた匂い。

多分ここに来る途中で買ってきたんだろうな。

だから遅かったのか。

美味しそうに食べるその姿に頬が緩む。

｢大丈夫。待ってないよ｣

｢わりぃなさき。
マイキーがたい焼き買うって聞かねぇから｣

え？たい焼き？

｢どら焼き食べてるのに？｣

｢さきに買うって聞かなかったんだよ｣

｢言うなよケンチン。
チョコ味売ってたからさきに買っといた｣

そう言って紙袋をあたしに渡してくれる。

中にはたい焼きがひとつ。

｢えっ！ほんとに？！
万次郎ありがとう！｣

そうお礼を言えば、万次郎は嬉しそうに笑ってくれる。

たい焼きを手に取り、1口頬張る。

｢ん〜〜〜まっ♡
美味や美味。おいしい｣

あー、おいしい。美味だなほんと。

ほっぺ落ちそう。

万次郎はいつの間にか食べかけだったたい焼きを食べ終わっていて
また新しいどら焼きを1口頬張っている。

｢じゃあさき乗って｣

万次郎はどら焼きを持った反対の手で自分の後ろをぽんぽんっと優しく叩く。

これは乗れの合図。

万次郎の後ろに乗ると、自転車を漕ぎ始めた。

･･･
･･
･

"喧嘩賭博"の現場に到着。

金髪のいかにも弱そうな男の子をゴツイ男が一方的に殴っていて
その周りにはうるさい野次馬で溢れかえっていた。

｢処ッ刑！処ッ刑！｣

一方的な暴力。

それを見て盛り上がる観客。

それはほんとに処刑の様に見えてとても胸糞悪い。

｢もういいってタケミチ！！！｣

｢マジで死んじまうぞ！｣

なかなか倒れない金髪の男の子。

さっきの盛り上がりが嘘かのように少しずつ静かになっていく。

｢ま…だ…まだだよ……｣

肩で息をしながらそう口にする少年。

圧倒的な実力の差なのにそれでも諦めない彼。

ボロボロな体で今にも倒そうなのにそれでも立ち向かおうとする。

懐かしい影を感じた。

｢なんか、少し似てるね｣

｢……うん｣

誰にとは言わなくても万次郎なら分かるだろう。

万次郎は彼を一点に見つめる。

｢もう引けよ！タケミチ！
十分気合い見せたよ！！｣