大嫌いでした ［宮侑］

# 頑張りの証 ページ44

「…右、半歩前、後ろ、」

傍に北さんに立たれながら、私はいつも通り

皆の動きを予想する。

「……終わってええよ。」

悩むような表情の彼に、私は焦りを覚える。

やっぱ特技とかじゃなくて私の勘違い

だったのでは … ！？

「あ、あの」

「集合」

「「はい！！」」

え…集合？

集まってくる皆をきょとんと見ていると

北さんは口を開いた。

「…A、行動予知出来るかもしれん」

「「「はい？」」」

思わず私もそう言ってしまった。

「どういう事や？」

「ボールに触れる時に、皆動くやろ。

そん時に動く方向が、的確に分かってんねん」

「普通のこととちゃいます？」

治が首を傾げる。

「確かにボールが飛んできて動くんは

当たり前や。せやけどAは

ボールを上げる対象よりも早く予測して

それが当たっとんねん」

「ボールが宙に浮いた瞬間に何処へ

動くんか位置予想できるって事か…？」

侑が半信半疑という表情をしている。

正直私も驚いている、そんなことを

無意識にやっていたなんて。

「いや、ほんまや。俺も見とった」

大耳さんいつの間に…？！

「あ、せやから書いてあったんや、

ノートに。」

「ノート？」

赤木さんが謎が解けたとでも

いうように口を開いた。

「おん、ノートに書いてあったやろ。

“ 今日は動きが少し遅め ”

“ 判断能力高い ”とか」

「……北、凄い子後輩にしとるんとちゃう？」

「俺も驚きでなんも言えんわ…」

「あの、…そんなに、ですか？」

私以上に驚いている３年たちを見て私は

思わず聞いてしまった。

北さんは少し考えて私に問う

「対戦相手がいるスポーツで大切に

せんとあかんことは何や？」

「え、と。その相手を観察すること…？」

いきなりの質問に苦し紛れに出した

答え。

北さんは小さく頷いた。

「せや。もうちょい言うと相手の動きを

読む事、やな。バレーも例外やない。

無意識で位置予想できるようになったんは、

中学時代からの頑張りの証や」

「中学時代の…頑張り……」

私の中学時代は、無駄じゃなかったの？

ちゃんと私の人生に生きてるの？

「でも…」

「A、俺らの練習に口出してくれんか」

北さんの瞳は揺れていた。

「口出し…？」

稲荷崎の、強豪校の、練習に…？

「Aのその特技が、俺らには

必要やねん。」

そう言われた瞬間、私の扉が開いた。

「…尽力致します。」

全ては、頑張りを認めてくれる

このチームのために __________ 。

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