大嫌いでした ［宮侑］

# 一巡の代償 ページ34

「ほんなら練習始めんで」

「「お願いします！！」」

バレー部の掛け声って、しゃーす、と

します、の間なんだよね、稲荷崎って特に。

そう思いながら私も頭を下げた。

「お願いします」

それからはマネ業開始。

ジャグに水を汲み、特用の粉を入れて

振る。

簡単そうに見えて、人数分作るのは超

腕が痛くなる作業。

しゃかしゃかという音と、少し遠くから

聞こえる皆の掛け声を聴きながらひたすら

作業を続けた。

それからやっとスポドリを作り終え、

今度は選手観察。

北さんは安定したプレー。

尾白さんは日頃同様アグレッシブ。

宮は今日少しトスが低め。

銀は普段通りボールを拾ってる。

角名は本日少しサボり気味。

ノートにその度その度思ったことを丁寧に

書き留めていく。

暫くその体制を取ったあと、北さんの

休憩という声と同時に私も動く。

予め預かっていたタオルを

畳み直したものとスポドリを共に渡し始める。

「北さんどーぞ」

「ありがとな、大変やったやろ」

「皆さんが練習している中でそんな事

言ってられませんよ」

お疲れ様です、という言葉を残して

上級生から順に渡していく。

「尾白さん、大耳さん、赤木さんも

お疲れ様です」

「「「ありがとさん」」」

「２年部の皆もお疲れ様」

「ありがとなぁ」

「美味、A才能あるわ」

「そりゃどーも」

小さく笑ってお礼を言う。

褒められるのは悪くない。

「あ、小作くん」

「マネさん？初めまして」

小作 裕渡。

クラスは知らないけど一応同級生。

新幹線の席何処だったのか宮に聞くと

１年の隣だったらしい。気付くわけないだろ。

「あ、私、天音A。

Aでいいよ、宜しくね」

スポドリを渡しながら初めて彼と

まともに話す。

「ありがとさん。裕渡でええよ」

「んなら裕渡」

ほわほわとした雰囲気のまま

暫く話して次は１年の元へ。

「君は理石くんだね、

私天音Aです、これスポドリと

タオル」

「あざっす！」

理石平介。

とても真面目なようで、リスクを負う

プレーを嫌う。

皆にスポドリとタオルを渡し終えてから

私は定位置に戻った

「ほんまに稲荷崎制覇したな」

「数日はチームメイトだし」

治とそう話していると角名がいきなり

爆弾を投下した。

「ところでさっき何書いてたの？」

「…何も」

「何や、天音。見せてーや」

「宮黙れ、聞くな！」

銀め含めた２年のキラキラした表情が集まる。

… 絶対見せねぇからな！？

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