大嫌いでした ［宮侑］

# 重症の予感 ページ16

「やってしまった …」

家に帰り、熱を測ると 38 ，7 という

日頃見ることない高熱。

冷蔵庫を見てみるも、残念なことに

何もなし。

さて、どうしようか …。

そう思っていると、スマホが震えた。

画面を見ると『北さん』の文字。

とりあえず、出てみることにする。

「もしも」

「今熱測って写真撮って送ってみ」

「はい？」

いきなり何を言い出すんだこの人は。

「無断早退したんやって？

熱でもあったんとちゃうん？」

先輩の情報網どうなってんのさ … 。

熱があるのはそうだけど、

無断早退した理由は違う。

でも、これは言わなくてもバレないだろう。

「そうです、熱ありましたんで

無断早退しました。すみません」

すると帰ってきたのは沈黙。

え、と思っていると北さんが息を吐いたのが

分かった。

「嘘やろ、それ」

「…どういう事です？」

「他に理由あったんやな？」

「いや、何言ってるんですか」

「Aは、ちゃんとやる子や。

意味もなく無断早退するなんて有り得ん」

返す言葉が見つからなかった。

「…悩んでる事があるなら言い。

とりあえず、熱下がるまではゆっくり

寝とくんやで。ええか？」

「……はい」

「ん、ほな。」

そうして通話は終わった。

頭のいい先輩を持つのも、考え物である。

そう思って、とりあえず食べるものも

ないし、買いに行く元気もないので

ベッドに寝転んだ。

まぁ、明日には治っているだろう。

そう考えて、今日も一人、目を閉じる。

意識を手放す最後に脳内で見えたのは、

昼間見た、トスをあげる宮侑の姿だった。

……かなり重症かな、これは。

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