生徒会長命令、適応外［ 桃 ］

# 今日は ページ8

歩いていると、目の前に出てきた人。

『ストーカーですか、警察呼びますよ』

「先輩を無視して歩くからでしょ。

まだ帰宅時間じゃないんだけど？」

腕時計に目線を流して、ご立腹の様子の彼

…もとい、私の先輩。

言い換えれば生徒会長だ。

自由奔放な私を毎度決まって注意する

生真面目な人。

『生徒会長こそなんでここに

居るんですか』

先輩が居るのも充分おかしい。

彼は小さく息をついて、私をじっと

見つめた。

「俺は、他校の会議に行ってたんだよ。

そしたら途中で見知った後輩を見つけたの」

そういえば、月1回、いろいろな学校の

生徒会長が集まって近況報告をする

予定があったっけ。

運悪く、今日だったなんて … 。

ま、いつも皆より早く帰っているから

今日じゃなくてもアウトだったんだけどね。

そんなことを考えながら、私は

鞄の中からチョコを取り出した。

『見知った後輩に会うなんて

お疲れ様です』

「君の事だよ…って、そのチョコ」

指さされた手元のこれ。

『先輩が昼休憩に買って下さった

チョコレートですよ』

「やっぱり？…すぐ食べたかと思った」

心底意外、とでも言うように、

彼は注意も忘れて驚いている。

私って、

結構な欲張りに見えているのだろうか。

納得いかないな。

『先輩に買ってもらった物をすぐ食べるのは、

自分でも分からないんですけど

なんか勿体なくて』

そう言うと、一瞬固まった先輩。

…何かまずいことでも言ったかな？

そう思ったが、すぐにいつもの先輩に

戻った。

「…とりあえず！

HRを抜け出さないこと。いいね？」

『…』

私の学校生活がつまらなくなっていく。

不貞腐れたような目で見ていると、

察したのか、小さく溜息をついて言葉を

足した。

「帰り際にお菓子1個奢って

あげるから…ね？」

『帰宅時間に帰ります』

お菓子買ってくれるなら話は別だ。

先輩は、やれやれ、とでも言いたそうに

肩を竦めたあと、ゆっくりと歩き出した。

「それじゃ、今日はいいよ。

気をつけて帰りなね」

『ありがとうございます！』

「はいはい」



















私とすれ違う時、先輩が小さく笑ったのが

分かった。



















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またのお越しを。

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