コーヒー、一杯《桃》 (ページ5)

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四杯ページ5

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手元にある資料はクシャクシャになっていて、涙が込み上げる。

「…ごめんなさっ、」

『んん、だいじょーぶ』

ふんわりとした髪は春風に揺れていて、思わず見とれてしまった。

不器用に私の手から資料を取ると、ぎこちなく私の頭を撫でる。

街の真ん中で頭を撫でるのは恥ずかしいから、路地裏へ移動しても小瀧さんは私に背を向けて耳を赤くしてる。

春と言えど寒いから、私の手も冷たい。

「…好きです」

『は？』

少し冷たい貴方の視線も、もう虜なんです。

30代と年の差が出来ても、貴方に合う大人っぽさを勉強したいんです。

貴方の色気に虜にされた私を助けてください。

『あんなぁ、さっき会ったばっかなのに何で好きになるん』

眉間に皺を寄せて私のおでこにとんとんと触れながら話す。

好きに理由なんてありますか。

好きになってしまったんだから仕方がないんです。

好きなんです。

例え貴方が私のことを知らなくても。