chemistry (ページ50)

今日:44 hit、昨日:63 hit、合計:9,842 hit

・ページ50

.

「いいですね。ブレスレットがしっかり見えるように。今市さんは片手を早乙女さんの腕に添えて、片手は繋いでもらって、手元を見せるように」

「はい」

　

返事をしながら、相変わらず冷たい彼女の手をとる

全身で心地よい重みを受け止めると、2人の顔の距離がさらに近くなるのを感じた

カメラに視線を向けると、連続してシャッターが切られ、ディレクターの賞賛する声が聞こえてきた

「次、この衣装での最終ショットになります。おふたり隣り合ってもらって」

これでもかと密着していた身体が離れ、次のポージングのために移動するが、お互いの手が離れることはない

「早乙女さん、今市さんの肩を組むように片手を首辺りに回してもらって。そう、リングが見えるように。」

彼女の腕が肩にかかる間も軽く繋がれている手

なんとなく、お互い離すことはしない

「そう、もう片方の手は今市さんの胸元に置く感じでこっちのリングも見せてください。今市さんは目線だけください」

指示通り、彼女のもう片方の手が俺の左胸に触れると、案の定早くなる鼓動

カメラに視線を向けながら、密かに深呼吸をする

「いいですね！じゃあ最後、おふたり目線を合わせてもらってラストショットにしましょう」

彼女の視線を感じながら振り返った先

どこか遠くを見つめているような潤んだ瞳

目が合った瞬間、またあの火花が散るような感覚が戻ってきた

そっか

俺、Aちゃんのことが好きなのか

何の疑いもなくスッと心に入ってきたその気持ち

それを認めた瞬間、身体の内側から高揚感がとめどなく溢れる

　

この気持ちが俺だけのものでないことを確認したくて、俺の体温が移って温かくなり始めた彼女の手を、強く握り直した

.