渦 ーside Rー ページ49
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アップテンポの洋楽が心地よく流れるスタジオ内
女性と2人の撮影なんて慣れていなくて、緊張していたけれど、ディレクターやカメラマンが的確にポーズを指示してくれるのでスムーズに進んでいる
「早乙女さんは頬杖をつくようなポーズで、今市さんは早乙女さんの肩に両手をかけてもらって」
次の指示が出て、Aちゃんとの距離を詰めながら、両手を彼女の白くて細い肩にかける
「もう少し顔寄せてください」
わかってる
撮影だってわかってるけど
近い
Aちゃんが近い
彼女に近づく度に妙に緊張している自分がいる
「早乙女さん、今市さんの肩を組む感じでもう少し密着してもらって。左手は繋いで前に持ってきてください」
Aちゃんの細い腕が肩に周り、手を差し出すとそっと握られた
「手冷た」
繋いだ手がひんやりとしていて、思わず彼女を見ると
「あ、すみません、末端冷え性で」
申し訳なさそうに言うAちゃん
そのやりとりが何だか面白くて2人して声を殺して笑う
「、、、なんか、照れるよね」
小声のままそう言うと、彼女はじっと俺のことを見つめた後、ニコッと微笑んで小さく頷いた
その表情を見た瞬間、心臓の鼓動が早くなるのを感じた
「そのポージングいいですね。その角度のまま、早乙女さんが今市さんのことを後ろからハグする感じにできますか?」
スタッフの声が聞こえてきて、撮影中だったことを思い出す
ハグ、、、と思っている間に、俺の背後に移動したAちゃんの腕がそっと身体に回され、包み込まれる
そして、自分の鼓動とは違うリズムの鼓動を感じる
緊張してるのは俺だけじゃない
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作者名:はるまき | 作成日時:2024年1月19日 17時