・ ページ35
.
長旅も終盤
離陸の体制に入るとの機内放送が流れ、乗客の間にもホッとしたような空気が漂う
大きく伸びをして首を回すと、手荷物の整理を始めて降機の準備をする
JFK空港を現地時間の昼頃に出発したが、日本は夕方
雲の向こう側に夕日が見えて、辺りはオレンジ色の光で埋め尽くされている
スマホを取り出し、写真を撮るとしばらくその景色を見つめた
離陸が完了し、足の怠さを感じながらゆっくりと移動する
入国審査を終えて、手荷物の受け取りを待ちながらスマホをチェックする
仕事の連絡が数件入っていて、明日のスケジュールは何だったかなと思い出しながら顔を上げた先
スーツケースを引き、スマホを耳に当て電話をしながら足早に目の前を横切っていく彼女を見つけた
ラウンジで会った時と同じ服装で、背筋をピンと伸ばして颯爽と歩く彼女には、凛としたオーラがあって、すれ違った数人が振り返るのが見える
やっぱり同じ便だったのか
そう思いながら咄嗟に追いかけようと歩き出す
が、知り合いでもないのに呼び止めたところでどうするのか?と自問し、元いた場所に戻った
もう一度、彼女の方を振り返ると、何やら楽しげに電話で話している様子で、その笑顔を見ているだけで胸にくるものがあった
そのまま到着出口に向かって行く彼女の後ろ姿を見送ると、ゆっくりと前を向いた
思えば、彼女の後ろ姿を見送るのは3回目
イベントで初めて会った日
そして今日、ラウンジを去るあの時と、到着ロビーを去る今
あのシャンと伸びた背中の残像が頭から離れない
そんな思いを切り替えるように、俺も彼女のように姿勢を正してから、大きく一歩を踏み出した
.
104人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はるまき | 作成日時:2024年1月19日 17時