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ヘッドホンをつけて、ボイチャをつける。すると向こうからお疲れ、と声が聞こえた。
「お疲れ様、急に誘ってごめんね」
「いいよ。まさか、メイから誘いが来るとは思わなかったけど」
「最近してなかったなって思って。大会が終わった後、KODZUKEN忙しそうだったし」
彼はそれなりに、と答える。
動画を観ていると案件が増えていたし、生配信も少し減っていると感じていた。だから、他に色々な仕事が入ったのだろう。
「落ち着いたから、また2人でゲームできるよ」
「いいの?」
「当たり前でしょ」
彼の中では当然のことになっていたことに驚いたけど、それよりもそうなっていることが嬉しかった。
「メイから誘いが来るのも悪くないね」
「そう?」
「うん。あ、今日は近距離使おう」
これまで通り変わらないゲームをして、私はふと思った。
「大会の時、結局手元見れなかったな」
「おれは見てたよ」
「それはさ、囮作戦の時でしょ。私はずっと自分の画面見てたんだから、絶対無理」
勿体無いことしたな。せっかくKODZUKENの手元を見るチャンスだったのに、結局見たのは自分のキャラクターだった。
直接会わない限り不可能なので、ものすごく残念だ。
「そんなに見たいの?」
「見たいよ!だって、世界のKODZUKENの手元だよ?生で見たかった」
上手い人から技術を見て盗むのは大切なことなのだ。
「じゃあ、見にくれば?」
「え、どうやって?」
「おれの家、来なよ」
おれの家、つまりミケの家…つまり、KODZUKENの家。
「いやいや!ダメでしょ!だって、KODZUKENが女を家に入れてたなんて知れたらまずいよ!」
「メイの存在は大会で知れ渡ったんだし、問題ないよ」
そう言う問題じゃない。マスコミが追っているかも知れないし、スキャンダルはブランディングを汚す。
確かに行ってみたい気もするが、そこはダメだと頭が理解している。
「ふーん。つまり、おれとAはやましい関係ってこと?」
「違うよ!健全なゲーム友達!」
「…まぁ、それなら大丈夫でしょ。とにかく、今週の日曜日は空いてる?」
確か、その日に予定は入っていない。
「空いてるね、10時に迎えにいく」
すごく強引だが、この誘いを断る理由がどうしても頭に浮かばない。
それに、彼が言う通り私達は深い関係ではない。
「研磨くんって結構頑固だね」
「お互い様」
その言葉に否定ができず、その日はなんだか彼に負けた気がした。
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花道時代(プロフ) - えまさん» コメントありがとうございます!いつも感想を書いて頂き嬉しかったです! (4月22日 7時) (レス) id: 0bbda94348 (このIDを非表示/違反報告)
花道時代(プロフ) - 食べるさん» 感想ありがとうございます!そのように思って頂けて、書いた側としては嬉しいです。読んで頂きありがとうございました! (4月22日 7時) (レス) id: 0bbda94348 (このIDを非表示/違反報告)
えま - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!! (4月21日 15時) (レス) @page41 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
食べる(プロフ) - 完結おめでとうございます。主人公の考え方や最終的な二人の関係性のあり方など、共感できるところが多く、すごく楽しめました!日々の合間にこの小説を覗くことが、個人的な楽しみでした😳素晴らしい作品を、ありがとうございました! (4月21日 11時) (レス) id: 52b293a903 (このIDを非表示/違反報告)
花道時代(プロフ) - カナタさん» 感想ありがとうございます!これからも、色んな作品を書いていきます! (4月18日 14時) (レス) id: 0bbda94348 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花道時代 | 作成日時:2024年3月11日 21時